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163 名前:隣町での聖杯戦争 ◆ftNZyoxtKM [sage 四日目・夜:夜間屋内戦] 投稿日: 2007/01/22(月) 04 15 45 伏せ姿勢から立ち上がる事なんてできはしない。 元より脆いと言うことを差し引いても、遮蔽物を簡単に撃ち抜いて飛び去るその弾丸は身体のどこに当たろうとその部位を吹き飛ばすことになるだろう。 そんな予感があったから、立ち上がることなく、匍匐状態のまま部屋の外を目指す。 部屋の外から気付かれることなく接近しなければならない。 拳銃があるとはいえ、機関銃と比べれば火力は著しく落ちる。 理想型を言えば、零距離から一撃で心臓を撃ち抜く事。 一撃で倒し、反撃の隙を与えないことだ。 ……自分に出来るか? もう一度、誰かを殺すことが出来るか? 首を振り、考えを打ち消す。 「……できるさ」 自分に言い聞かせ、手にした拳銃を握り直す。 次々と手元の銃から弾丸が発射され薬莢が落ち、目の前の遮蔽物に穴が開いていく。 反撃はない。 倒したのか? ……その保証はない。 糸のトラップには引っかからず、その真上に設置された赤外線のトラップには引っかかった。 つまりまず間違いなくその瞬間までは生きていた。 ……右手を失ったのは痛い。 出血は止まっているし、発砲動作そのものに支障はないが、二挺装備は不可能となった。 義手にしたとしても、恐らく元に戻ることはあるまい。 「聖杯に望むことが増えた、な……」 己の望み、『完璧なる存在』になるために、欠け落ちた部分は存在してはならない。 その為に聖杯を望み、願う為に銃火器の取り扱いにも精通したし、魔術の鍛錬も怠らずに続けてきた。 だが右手は切り落とされた。 近接戦闘の技術は未習得だった。 バーサーカーで敵サーヴァントを分断し、防御魔術で防御しつつ敵マスターをトラップと銃火器で攻撃する。 それが彼の想定した必勝となるはずの戦術であった。 だが接近され、右手から切り落とされた。 「実戦経験の差、か……」 防御魔術の突破はしえないようだが、魔術の解除から攻撃、再展開の間に攻撃された。 数度、いや、それ以上の実戦経験があると言うことだろう。 そしてこの必勝戦術を試すのは今夜が初めて。 人寄せの魔術は既に停止し、己の内に魔術を溜めておく。 ちらりと机に立てかけられた銃器に目を向ける。 M16A2。 米軍で正式採用される信頼性の高いアサルトライフル。 今夜このビルに運び込んだ武装はこれで全て。 「確実に殺しきる……!」 完全なる殺意を込めて、隣室へ向けて途切れ途切れに弾幕を張る。 それでも、ベルト給弾式のMG3の弾丸が切れるまであと一分もない。 廊下に出て、発射元を探る。 発砲音が連続してに聞こえてくるので探り当てるのは比較的簡単だった。 「……いた」 ちらりと覗き見ると、左腕で引き金を絞り、先程まで居た部屋へ、今となっては明後日の方向に向けて乱射を続ける男が見えた。 瓦礫が変な風に邪魔をしている上、瓦礫の山を越えてしまえば敵まで障害物はない。 恐らく敵までは30メートル前後。 そして気付かれれば恐らくやられる。 ……ここから拳銃で狙撃する。 頭を狙えば恐らく必殺だろうが、扱ったことのない拳銃という武器で小さい頭部に当てられるかは分からない。 攻撃手段を奪うという意味では残った左腕だろうが、否定要素は頭部に同じ。 だとすれば狙うのは胴体か? 胴体を狙えば恐らく当たるだろうが倒せるかと言われれば恐らく否、だろう。 それに、足下には予備の物である火器が置かれている。 持ち運びを前提にして居るであろうサイズの火器を壁に向けて撃つことはないだろう。 ……恐らくチャンスは一度。 伏せ撃ち体勢ならば命中精度が上がるだろうが、外して気付かれれば次の動作に移るまでに時間がかかる。 立ったままでは次の動作に移るまでの時間は最速だが、肝心の命中精度は下がるだろう。 折衷案は膝立ち姿勢で、中途半端かもしれないが、即応も取れると言う意味では重要かもしれない。 少し痺れの取れた左手を添え、狙いをつける。 ダブルクロス 1:立ち撃ちの姿勢で―― 2:膝立ちの姿勢で―― 3:伏せ撃ちの体勢で―― A:頭部を狙う―― B:左手を狙う―― C:胴体を狙う―― 投票結果 1 0 2 5 3 3 A 1 B 2 C 5 結果:膝立ちの姿勢で胴体を狙う
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空戦 -DOG FIGHT- ◆nig7QPL25k 学術地区に存在する、一般学生向けの中学校。 魔術都市にこのような学校があるのを、意外に思う人間もいるかもしれない。 しかし魔術師の街とはいえ、全員が魔術を使えるわけではないのだ。 たとえば才能に恵まれなかった者。兄弟に継承者の座を譲り、自身はそうでない人生を送ることを選んだ者。 あるいは一般人でありながら、たまたま魔術師に嫁いだ末に、このユグドラシルへ移り住むことになった者。 故に魔術都市においても、魔術が使えない人間というのは、決して珍しい存在ではないのだ。 だからこそ、それに合わせた職業や、教育機関というものも、この街ではきちんと用意されていた。 「おはよう、さやかちゃん」 鹿目まどかも美樹さやかも、そんな一般学校に通う、魔術を使えない中学生だった。 少なくとも、表向きには。 「おはようまどか。昨日は本当に大丈夫だった?」 「えーっと、うん、大丈夫。ちょっと危なかったけどね」 騒がしいホームルーム前の教室の中、二人は前日の一件について話す。 純粋に心配してということもあるが、もちろんさやかの側にとっては、理由はそれだけには留まらない。 事故から生還したというのが、本当に起きた出来事なのか。 彼女は襲撃を免れた、サーヴァントのマスターなのはではないのか。 会話の中で、確かめようとしたのだ。戦うことができずとも、せめてそれだけでも知るためにも。 「あっ、鹿目さんおはよー」 「ねー昨日どうしたの? 学校にも連絡なかったって聞いたけど」 「あー、えっとね、その……」 やがて他の学生達が、まどかが登校したことに気付き、口々に昨日の欠席の理由を問う。 事故という鮮烈なワードは、子供達の関心を強く刺激し、あっという間に人だかりができた。 一応会話に矛盾がないか、聞き耳を立て確かめることはできる。 だがこうなると、踏み込んだ質問を、さやか自身が行うことはできなさそうだ。 (………) そんなことを考えながら、セイバーのサーヴァント――レオン・ルイスは、その光景を傍観していた。 隣の男子の机の上に、霊体化した不可視の体で、無造作に腰を下ろしながら。 (サーヴァントの気配は……ない) 念のため、周囲を見回してみる。 相手が霊体化していれば、その気配を察知することは困難だ。それは理解している。 しかし同じ教室に、自分と同じサーヴァントが、息を潜めている可能性があると考えると、どうしても意識せずにはいられなかった。 この温厚そうな少女がマスターであるなら、いきなり派手な行動を起こすことはないはずだ。そう信じたい。 (にしても……) そうして教室を見渡していると、別のことが気になってくる。 具体的には、数十もの席が並んでいる、この学校の教室というものがだ。 レオンの暮らした時代には、こんな大掛かりな教育機関などなかった。 中世ヨーロッパにおいては、学校とは職人や僧侶を育てるための教室であったらしく、現代とは大きく意味合いが異なっている。 らしい、というのは、他ならぬレオン・ルイス自身が、学校に通ったことがないからだ。 彼自身は特殊な事情を抱えてはいたが、彼のように学校に通えない子供や、さやかの歳で働いている子供ですらも、全く珍しいものではなかった。 (変われば変わるもんだな) それが良い変化なのか、悪い変化なのかは分からない。現代は自分の時代に比べて、何かと面倒になっているらしい。 それでも、読み書きや算数を分けけ隔てなく、誰でも学べるというのは、羨ましい時代だと思った。 父親に習っていた自分とは、大違いだ。 そんなことを考えながら、レオンは賑やかな学び舎を、一人静かにぐるりと見渡す。 (……そういえば、アイツがいないな) そうしていると、ふと、あることに気がついた。 まどかと入れ替わるようにして、姿が見えなくなった人間がいるのだ。 昨日さやかが話しかけ、まどかのことを尋ねていた、車椅子の少女がいない。 確か、あの娘の名前は―― ◆ 《そうですか……やっぱり、登校していましたか》 東郷美森が、バルクホルンから念話を受け取ったのは、キャスター達の元を離れて、しばらくしてからのことだった。 学校には向かわず、不審な建物を調べてみたが、もしかしたらその間に、鹿目まどかが姿を現しているかもしれない。 そう考え、自らのサーヴァントを先行させて、学校の様子を探らせていたのだが、どうやら当たりだったようだ。 まどかは無事に登校し、美樹さやから級友と共に、教室で授業を受けている。 突如姿を消した時には、マスターでないかと疑ったのだが、無事に生きて帰ったからには、その可能性は高そうだ。 《どうする? 仕掛けるにしても、こんなところで、派手に行動を起こすわけにもいかないだろう?》 バルクホルンが指示を求めてきた。 最後の確認をするのなら、やはり直接攻撃を仕掛けて、出方を伺うのが分かりやすい。 だがそれには、相手サーヴァントからの反撃という、大きなリスクがつきまとう。 おまけにマスターでなかった場合、悪目立ちするだけに終わるため、これまた損だけが残るのだ。 さて、これをどうするか。この場は大人しく見逃すべきか。 (そういえば……) そこまで考えた、その時。 それらのデメリットを解消する、便利なアイテムがあることを、東郷美森は思い出した。 ポケットに入れていたキャスターの宝具――『機界結晶(ゾンダーメタル)』を取り出す。 三つしか持っていないこれを、いきなり使ってしまうのは、もったいないことかもしれない。 それでも、使うべき時は間違いなく今だ。第一なくなったものは、また彼らに会って、ねだればいいだけの話だ。 《渡したいものがあります。一度戻ってきてください》 東郷はそう決断し、バルクホルンへと念話を飛ばす。 《……あれを使うんだな》 アーチャーのサーヴァントからの返事は、ほんの一拍だが、遅れていた。 《その通りです》 《本当にいいのか?》 問いかけは先の同盟を非難したような、鋭い口調のものではない。 人の道を外れた行いをする自分を、気遣っている声色だ。 たとえNPCであっても、その尊厳を穢す行為は、勇者の使命とは相反するものだ。 本当にそんなことをしていいのかと、心配してくれているのだ。 《構いません。今更後戻りはできませんから》 その心遣いは、嬉しいと思う。 英霊の魂を受け継ぐサーヴァントが、精霊とは違うものであることを、ようやく実感できたとは思う。 されど、今はそれを受け入れるわけにはいかない。 東郷は不退転の決意と共に、この場に銃を携えているのだ。 使えるものは全て使う。良心などいくら引き裂けても構わない。 そうしなければ、結城友奈を救うという、己が大望は果たせないのだ。 《合流地点を指定します。すぐにそこまで来てください》 令呪はもったいないから使えない。車椅子での移動速度には限りがある。 であれば、ストライカーユニットとやらを履いているバルクホルンの方に、戻ってきてもらう方が手っ取り早い。 指示を出すと、東郷美森は、指定した場所へと進み始めた。 最愛の仲間たちを救うための、外道の道を歩むために。 ◆ (不甲斐ないな、今の私は) ゲルトルート・バルクホルンは思う。 日陰の壁にもたれかかりながら、アーチャーのサーヴァントは思考する。 今の自分の行動の、どこに正義があるのだろうと。 少女一人止められない自分は、ひどく情けなく見えるのだろうと。 同じカールスラント軍の友人であれば、もっと器用にたしめられたかもしれない。 リベリアンの悪友からは、嘲笑われてしまうかもしれない。 (せめて彼女の目的だけでも、聞き出すことができたなら) 後戻りはできないと、彼女は意味深に口にしていた。 その心さえ分かったならば、声をかけられたかもしれない。 手段を選ばず、性急に、勝利と聖杯を求める東郷を、諭し導くことができたかもしれない。 それでも、それはかなっていない。未だ彼女はその心を、固く閉ざしたままでいる。 悲しいかな、不器用な性分の自分では、その扉の内側を、察してやることができない。 何と声をかけるべきか、どうすれば止まってくれるかも、今のバルクホルンには分からない。 「ゾンダァァァ……」 呻くような声が聞こえる。 蠢く金属の光沢が見える。 それが学校の校舎裏へと戻った、バルクホルンを我に返らせる。 既に作戦準備は整ってしまった。後は彼女が指示を出すだけだ。 今更なかったことにしようにも、『機界結晶(ゾンダーメタル)』を植えつけたNPCは、もはや元には戻らない。 (そうだ) 今は進むしかないのだ。 それ以外の道を見つけられないまま、ここまで来てしまったのだ。 であれば、迷いも躊躇いも捨てろ。これしかできないというのなら、今はそのことに集中するのだ。 「――行け」 短く放った命令が、作戦開始のコマンドだった。 バルクホルンの指示を受けた、紫色のゾンダー人間は、建物の入り口へと進み始めた。 全ては命令を実行するために。 この学校を襲撃し、盛大に暴れ回ることで――鹿目まどかの正体を、白日のもとに晒させるために。 ◆ 「きゃぁあああっ!」 八方から響き渡る悲鳴と、押し合いへし合いの人混みの中。 思ったより派手好きな奴がいたものだと、暁美ほむらは思考する。 得体の知れない化物が、隣のクラスに現れた。 その事実はジュニアハイスクールを、一気にパニックへと陥らせていた。 《セイヴァー、まどかのことはマークしている?》 まさに隣のクラスにいたまどかのことは、混乱の中で見失ってしまった。 姿を隠しているサーヴァントへ、ほむらは念話で問い掛ける。 《大丈夫よ。見えているわ》 《ならそのまままどかを守りなさい。私はこの騒動を起こした犯人を探す》 美国織莉子の返事を聞くと、ほむらはそのように指示した。 現れたのは怪物だそうだ。明らかにサーヴァントではない。 であれば、その怪物を操るサーヴァントが、学校のどこかに潜んでいるはずだ。 そしてそのマスターも、恐らくは同じように身を隠している。 事を起こした何らかの意図の下、手下へ的確な指示を出すために。 《構わないけれど、しばらくこのまま、様子を見させてもらっていいかしら?》 反抗ではなく、意見具申。 それならば令呪の制約の外ということか。 《何故?》 思わぬ織莉子の提案に、ほむらは人混みを押しのけながら、眉をしかめてそう尋ねる。 それはつまり、まどかを助けず、放置しておくということだからだ。 《彼女が死亡する未来は、未だ予知できていない。であれば、鹿目まどかの死の未来を、誰かが食い止めているということになるわ》 《……まどかの家にいたサーヴァントね》 《彼が現れるというのなら、今後のためにもその力を、見せてもらいたいと思わない?》 一理ある。 まどかのサーヴァントの力は未だ未知数。彼女を守り抜く上で、どの程度あてにしていいものかは不明瞭だ。 彼が脅威を払うというのなら、その戦いの瞬間を織莉子に見せ、対応を考えさせるのも手ではある。 理屈の上では、間違いなくそうだ。 《……好きにしなさい》 もっとも、まどかを囮に使っているようで、心理的には最悪な気分だったが。 不承不承ながらも了承した、暁美ほむらの顔立ちは、随分と不愉快そうに歪んでいた。 ◆ 「ゾンダァァァッ!」 金属の体が不気味に光る。 意味も分からない雄叫びが、一層の恐怖心を煽る。 おぞましい気配を纏うヒトガタ崩れが、爛々と光る瞳でこちらを睨む。 血だまりの中心で蠢いているのは、人間大の怪物の姿だ。 美樹さやかの教室に現れ、教師を嬲り殺した紫の魔物だ。 それは突然に忍び寄り、教室の扉を叩き割り、二時間目の授業に乱入してきたのだ。 「くっ……!」 恐慌に包まれた教室の中、さやかは敵の姿を睨む。 誰が何のために呼び寄せた、いかなる魔物であるのかは知らない。 だがその誰かというものが、聖杯戦争の参加者であることは、間違いないと断言できた。 「なんだよっ、なんだよこれぇ!」 「ひぃぃっ!」 NPC達が騒ぎ立てる。 混乱の渦中に落とされた教室で、紫の怪物が蠢く。 どうする。どうすればいい。 ここにいる者のほとんどはただのデータだ。だがもしかしたら、予選を通過できなかった、本物の人間もいるかもしれない。 「あ、ああ……!」 何より壁際で竦んでいるまどかは、人間である可能性がかなり高い。 どうすべきだ、美樹さやか。 このままでは遠からず全滅だ。本物の人々も、鹿目まどかも、恐らくは等しく食い殺される。 (やっぱり、ここは……!) 抗する術は魔法しかない。 ソウルジェムの魔力を解き放ち、変身して斬りかかるしかない。 ここで正体を明かせば、程なくして正体がばれるだろう。そうなれば聖杯戦争を戦う上で、不利になることは間違いない。 だが、これしか手がないのだ。自分の命可愛さに、友達を見殺しにできるほど、さやかは薄情ではないのだ。 左手の指輪を光らせる。 内なる魔力を渦巻かせる。 魔法少女の本体にして、力の源たるソウルジェム。 命を対価に奇跡を具現し、結晶化させたその宝石が、光と共に解き放たれる―― 《――待て!》 と思われた、その瞬間。 斬――と鋭く音が鳴った。 念話の声と重なって、視界の中心で白い衣と、赤い炎が舞い踊った。 赤は燃える炎の色。 そして男の髪の色。 振り向く瞳もまた赤く。猛る炎のごとく熱く。 「セイバー……!」 そうだ。すっかりと忘れていた。 今の自分は一人ではない。一人きりで戦っているのではない。 誰一人仲間のいない世界でも、新しくできた仲間がいる。 最優のクラスと共に現界した、黄金騎士のサーヴァント。 燃える剣騎士、レオン・ルイス――今はその力が、共に在る! ◆ 《さやかは何もするな。ここは俺が押さえる》 《えっ!? それは……》 《今なら俺の顔が割れただけで済む。このまま身を隠していれば、お前の正体は隠し通せるはずだ》 主へと念話を送りながら、レオンは油断なく気配を探った。 この学校内に蠢く気配は、今の一つきりではない。 同じ邪気を纏った魔物が、まだ他の学生を襲っている。 それがいつ美樹さやかを捕捉し、襲いかかってくるか分からない。 であれば、ここは戦うべきだ。この刃で全てを斬り伏せるべきだ。 「早く行け! 学校の外まで逃げろ!」 怯える学生達に叫んだ。 言うやレオンは跳躍し、教室を出て廊下を走った。 霊体化によって実体をなくし、人混みの中を駆け抜ける。 人の波にも臆することなく、姿なき疾風へと変わる。 魔力の気配はこの下からだ。 ねじれた階段を下ることなく、三階の廊下から飛び降りると、見事に二階へと着地した。 「ゾンダァァァ!」 姿を見せたその瞬間、現れたのは紫の魔物だ。 飛びかかる鋼鉄の亡者に、レオンは刃を振りかざす。 突撃の勢いを利用した剣は、微動だにすることもないまま、魔物の肉体を両断した。 ソウルメタルによって鍛え上げられた、心の映し身、魔戒剣。 守りし者としての修練を積み、曇りなき信念で固められた刃にとっては、鋼であっても土くれ同然。 塵となり消えた敵には目もくれず、レオンは次なる獲物を探る。 研ぎ澄まされた神経の前では、たかだか使い魔崩れの動きなど、赤子のそれも同然だ。 (こいつらを操っている奴は、どこだ) 三体目の怪物を捉えながら、レオン・ルイスは思考する。 この程度の連中ごときが、サーヴァントであるはずがない。 であれば、これはただの使い魔だ。操っている本体が、この近くのどこかにいるはずだ。 どこかで戦いを見ていた奴が、さやかの命を狙ってきたのか。 あるいは自分達と同じように、まどかに目をつけていたのか。 斬り伏せた三体目の魔物を、踏みつけ床へと押しつけた瞬間。 (――そこか!) 突如として、迫る気配を感じた。 何もないところから現れた気迫だ。これまでとは比較にならない殺気だ。 セイバーとしてのレオンに与えられた、高ランクの直感スキルは、襲撃者の存在を見逃さなかった。 刃を携えて振り返る、その先に実体となって現れたのは―― 「うぉぉぉりゃあああああッ!」 パンツだ。 否、女性の臀部だ。 こちらに尻を向けた女が、怒号と共に突っ込んでくる。 一瞬の光景だ。ツッコミすら浮かんでこなかった。 その動作が、脚部の推進装置を逆向きにして、急制御をかけるためのものだったことにも、レオンは気付くことはなかった。 理性で状況を受け止めるより早く、女がこちらに放った何かが、炸裂し爆音と業火を生じた。 ◆ (あれが本当に、奴のサーヴァントなのか?) あまりにも呆気無い幕切れだ。 ロケットランチャーの爆炎を見ながら、バルクホルンは思考する。 姿を現した白衣の剣士は、それほど強そうな相手ではなかった。 あれが鹿目まどかを救い、本戦へと進ませた力だとは、到底信じられなかった。 この程度の爆撃で、為す術もなく吹っ飛ぶようなら、それこそ労力の無駄というものだ。 東郷美森の指示通り、『機界結晶(ゾンダーメタル)』全てを使う価値が、あの男にあったとは思えない。 (まぁいい。これで任務は完了だ) 思考し、パンツァーファウストの発射筒を引っ込める。 あのサーヴァントは明らかに、鹿目まどかの教室に姿を現した。 戦闘能力がどうであれ、彼女はサーヴァントを失い、聖杯戦争から脱落したのだ。 あとは姿を見られる前に、とっとと退散してしまおう。 「……っ!?」 そう思考した、瞬間だった。 彼女の周囲を取り巻く空気が、まばたきの間に一変したのは。 振り返り視線から逸れた炎が、ごうごうと渦を巻き始めたのは。 「これは……!?」 我知らず、ゲルトルート・バルクホルンは呟く。 うねる真紅の光の向こうに、ただならぬ何者かの存在を感じる。 その気配は敵を射殺し、竦ませる殺気などではない。 相対する者に畏怖を抱かせ、ひれ伏させる神々しき威容だ。 刹那、赤は金へと変わった。 突風と共にほとばしる光が、熱気をことごとく吹き飛ばしたのだ。 「――フンッ!」 豪腕が灼熱を吹き飛ばす。 翻るマントが炎を払う。 燃える業火の真っ只中から、姿を現したのは、黄金。 目もくらむ太陽のごとき甲冑を、その身に纏った剣の騎士だ。 その堂々たる威容は、さながら神話の英雄譚から、そのまま飛び出したかのようであり。 されども頭部をすっぽりと覆った、人狼のごときフルフェイスヘルムのみが、獰猛な眼光を放っていた。 「それがお前の本当の姿か」 狼の瞳は、赤く燃える。 それは先程爆弾を浴びせた、恐らくはセイバークラスであろうサーヴァントの真紅だ。 恐らくは自分のそれと同じ、ステータスをアップさせる類の宝具だろう。 事実として、黄金騎士の纏うオーラは、一瞬前に感じたそれとは、桁外れのものになっていた。 ただ鎧を着ただけではない。そんな生やさしいものではない。 油断をすれば呑まれそうな――否、その顎によって食い千切られそうな。 強く気高く猛々しく、迫り来る全てを退ける。まさに最優の剣騎士に相応しい、堂々たる風格を身に纏っていた。 これが神代の時代を戦い抜いた、古の英霊の威容というものか。 長く戦ってこそきたものの、自分など未だ若輩であることを、否が応にも思い知らされる。 「そういうお前の方こそ、アイツらを操っていた奴で間違いないな」 言いながら、金のセイバーは剣を構える。 右手で刃を正面に向け、左手を沿わせる独特な構えだ。 刃金と黄金の鎧が擦れ、細かな火花が虚空に散った。 ぎりぎりと聞こえる金属の音は、獣の威嚇のようにも聞こえた。 「さてな。自分で確かめてみることだ」 冷や汗を感じた。 されどにやりと不敵に笑った。 呑まれれば負けだ。バルクホルンは己を律し、両手に愛用の機関銃を生じる。 大型機関銃、MG42S。本来ならばウィッチであっても、二丁で用いるような代物ではない。 されど身体強化を得意とする、ゲルトルート・バルクホルンは、それすらも難なく実現してみせる。 「………」 空気が、見る間に固まった。 互いにそれぞれの得物を構え、油断なく睨み合い、間合いをはかる。 先に動くのはどちらだ。相手はどのような手で来るか。それに対処することはできるか。 思考が交錯し、緊迫が張り詰め、びりびりと振動する錯覚すら覚える。 「――ッ!」 先に動いたのはセイバーだ。 床を蹴り、本物の狼のように、一挙に間合いを詰めてきた。 見るや否や、バルクホルンも動く。前進する敵とは逆に引き下がる。 アーチャーの武装は遠距離用だ。剣の間合いに入られては、その威力を発揮することはできない。 トリガーを引き、弾丸を放つ。 だだだだだっ――と途切れることなく、殺意の銃弾が遠吠えを上げる。 異なる世界の戦場においては、電動鋸とあだ名され、恐れられた名銃だ。 破壊力も連射性も申し分ない。その弾丸は人間はおろか、魔獣ネウロイであったとしても、一瞬で蜂の巣へと変える威力を有する。 「オォォォォ――ッ!」 その、はずだった。 (凌ぐのか!? この弾丸を!?) されど、セイバーは止まらなかった。 剣をかざし、鎧で受け止め、黄金の騎士はなおも走った。 獰猛な獣と化したサーヴァントは、迫り来る必殺の魔弾ですらも、まるで意に介さず突っ走る。 「ダァッ!」 壁が迫り、減速したバルクホルンに追いついた金狼は、遂にその牙を振り下ろす。 荘厳に輝く黄金の剣は、身をかわすアーチャーの背後の壁を、轟音と共に爆砕した。 斬ったのではない。砕いたのだ。 切り傷をつけるどころか、完全に刃を貫通させて、壁を粉々に吹き飛ばしたのだ。 (ここでは埒があかん!) 身を立て直しながら、バルクホルンは思う。 サーヴァントとの交戦は初めてではない。 だが、さすが本戦まで勝ち残った相手というべきか。その時に危なげなく倒した敵とは、まるで別次元の強さだ。 あれをシールドで受け続けるのにも、閉所でかわすことにも限度があるだろう。 屋内という戦場が大きなハンデだ。 なれば、場所を変えるべきだ。 「ぬぉおおおっ!」 雄叫びと共に、銃弾を放つ。 マシンガンの咆吼とともに、後退ではなく、敢えて突っ込む。 単純な攻め手だ。通じるはずもない。当然セイバーは剣を振りかざし、弾丸のことごとくを捌いてのける。 「りゃあッ!」 「!?」 だが、本命はそれではない。今のはあくまで牽制なのだ。 銃を消し突っ込むバルクホルンは、敵の脇腹へと飛び込む。 掴みかかったタックルの姿勢で、なおも推進力を増大させる。 光り輝くのは魔力の光だ。固有魔法・身体強化を、全開で発揮した証明だ。 不意打ちに面食らったセイバーは、呆気無いほどに押し出され、虚空へとその身を放り出される。 そうだ。虚空だ。 ゲルトルート・バルクホルンの狙いは、敵ごと廊下の外へと飛び出すことだ。 大きな窓ガラスをかち割り、躍り出た空間は、すなわち空。 宙を舞う術を持たないセイバーは、重力の魔の手に引きずられ、校庭へと見る間に落下していく。 「フン!」 壁面に剣を突き立てた。 それが勢いを殺すブレーキになった。 腕力で重力を強引に殺し、セイバーはその身を減速させて、粉塵を纏いながら着地する。 剣を引き抜き、埃を払い、すぐさま戦闘態勢へと戻った。 再び武器を取り出して、眼下を睨むバルクホルンと、赤い瞳が向き合った。 (もう言い訳は許されん) 開けた空中はバルクホルンの戦場だ。 逆に言えば、これで負ければ、完全に実力での敗北ということになる。 銃と共に覚悟を携え、仕掛けた得意の空中戦。 果たして黄金の英霊は、この状況に対して、どう出るか。 ◆ 「面白い。この状況、利用させてもらうとしよう」 ◆ 「はあ、はぁっ……!」 混乱の最中、まどかは走った。 名前を呼ぶさやかとははぐれてしまったが、それでも必死に出口を目指した。 ここには守ってくれるアーチャーがいない。この身一つで逃げるしかない。 サーヴァントのマスターであったとしても、鹿目まどか自身には、戦う力など何一つないのだ。 できることと言えば、こうやって、敵から逃げることくらいしかない。 自分のために戦ってくれる、あの黄金のサーヴァントの、足を引っ張らないためにも。 「うわぁああっ!」 前方から少年の悲鳴が聞こえた。 すぐさまそれは血しぶきへと変わった。 下駄箱へと向かう曲がり角から、姿を現したのは、新手だ。 「ォオオオオ……!」 「えっ……!?」 その姿は、怪物ではない。 鎧を纏い、瘴気を放つ、中世の兵士達のような軍団だ。 黒々としたオーラを纏い、呻き声を上げるその姿からは、生気というものが感じられない。 ホラー映画に出てくるゾンビ――装いはだいぶ違っているが、雰囲気はあれに近いのか。 先ほど校舎に現れたものとは、どこか違うものを感じる相手だ。 されど命を狙うべく、姿を現したことだけは、間違いなく共通していると言えた。 「あ、ああ……!」 ここまで来ておいて、出てくるのか。 あと一歩で校舎から出られる、そんなところで阻まれるのか。 数が多い。十人くらいはいるかもしれない。これでは逃げることができない。 「グォオオオオ……!」 敵はおぞましい唸りを上げて、じりじりと間合いを詰めてくる。 もはやここまでか。 これで何もかも終わりか。 大切な家族達のところへも戻れず、こんな得体の知れない地で死ぬのか。 ――すぐに俺を呼んでくれ。たとえ令呪を使ってでもな。 胸に、蘇る声があった。 それはあの夜にそう言ってくれた、心強い男の言葉だ。 そうだ。まだ手は残されている。たった三回しか使えない手だが、今使わずして何とする。 こんなところでは死ねない。絶対に帰らなければならない。 左手の甲に光が走った。三画のエンブレムの一つが消えた。 絶対に生きて帰る。そのために力を貸してくれる人がいる。 まどかは強く決意を固めた。ほとんど悲鳴に近い声で、その名をめいっぱいに叫んだ。 「来て――アーチャーッ!」 瞬間、視界を金色が覆った。 ほとばしる黄金の閃光は、幾千幾万の拳撃となって、死霊の兵士達をなぎ倒していた。 ◆ 空を飛べるという利点。 それは単に、移動が楽になるだとか、そんな低次元なものではない。 地上の者は縦と横の、二次元的な行動しか取れない。 たとえ跳躍したとしても、それもただ上に跳ぶだけだ。二次元よりも更に狭い、直線的な動きでしかないのだ。 対して空を飛ぶ者は、縦横のみならず高さすらも、自在にコントロールすることができる。 つまり陸の者が地を走るよりも、更に行動の自由度が高いのだ。 三次元と一次元。その動きの自由度の差は、戦闘においては絶対的なものと言えた。 「オォォォッ!」 レオン・ルイスが跳躍する。 黄金騎士ガロが天へと躍る。 振りかざす牙狼剣の一閃は、触れれば万物を両断する、文字通り必殺の一撃だ。 「っ!」 されど、それは当たればの話。 一直線の攻撃であれば、回避するのは容易いこと。 ゲルトルート・バルクホルンは、最小限の動作で難なくかわし、反撃の一打を叩き込んでくる。 構えた銃口は大柄な、MG151のもの。もはや歩兵の武器にすらとどまらない、戦闘機向けの機関砲だ。 「ガァッ!」 ばりばりと轟く弾丸を浴びては、魔戒騎士であってもひとたまりもない。 脇腹にクリーンヒットしたそれは、太陽のごとき光であっても、容易に地面へと叩き返す。 そうだ。ガロは太陽そのものではない。空を舞うようには生まれていないのだ。 土埃を上げ転がりながらも、レオンは何とか立て直し、身を起こして片膝をつく。 「これもだ!」 地上に向けて雄叫びが響いた。 バルクホルンの追撃は、先ほど放ったものと同じ爆弾だ。 パンツァーファウストという正式名も、レオン・ルイスには知るよしもない。 現代に生きていない黄金騎士は、予備知識を与えられているだけだ。それ以上のことは分からなかった。 「フッ!」 白煙を上げて迫る爆弾を、バックステップにて回避。 熱風にばたばたとマントを揺らし、炎の先の敵を睨む。 厄介な敵だ。現代の銃というものが、これほどの性能の武器に変貌していたとは。 その上相手は空を飛べる。遠距離戦に長けた武器を、こちらの手の届かない位置から、自由自在に放ってくる。 自分にないものを数多持った、疑いようもない難敵だった。 (翼の鎧は……使えないか) 一瞬、炎の翼を思う。 かつてメンドーサとの戦いで用いた、金と銀のガロを回想する。 あの姿になって戦えたならば、恐らくはこれほど苦戦することもなく、逆転することができただろう。 だが、それはかなわない。翼を纏い飛ぶためのピースが、今のレオンには欠けている。 (やっぱり、あの鎧はアイツのものだ) 歳の離れた弟を想った。 ガロが空を飛ぶためには、もう一つの魔戒騎士の鎧――『絶影騎士・ZORO(ゾロのよろい)』が必要不可欠だ。 されどその鎧は当の昔に、別の人間に受け継がれている。 本来の継承者ではなく、あくまで借りただけのレオン・ルイスに、与えられているはずもない。 (無いものねだりはしてられない……か!) とはいえ、そのことを悔いている暇はない。 手札が揃っていないのならば、ないなりに戦うしかないのだ。 確かにアーチャーは素早い。空を飛ぶことに関しては、間違いなくスペシャリストだろう。 翼を持たない魔戒騎士には、あれほど器用な立ち回りはできない。 (だが) だとしても、それがどうした。 魔戒騎士の相手とは、条理から外れたホラーなのだ。 奴らはあらゆる場所に息を潜め、舌なめずりし人を狙う。 それは陸地のみならず、時には夜の闇空から現れ、深き水底からも現れる。 陸も空も海ですらも、ホラーの戦場となりうるのだ。 そして黄金騎士ガロは、それらをことごとく討滅してきた。 あらゆる戦場での経験が、レオンには蓄積されているのだ。 自身に空を飛ぶ術はない。 されど空飛ぶ敵との戦いに関して、レオン・ルイスは百戦錬磨だ。 「ウォオオオッ……!」 内なる魔力を炎へ変える。 魔界の炎を解き放つ、烈火炎装と呼ばれる技だ。 煌々と燃え盛る緑の炎が、ガロの鎧を眩く染めて、やがて牙狼剣をも包み込む。 (仕掛けてくるか!) もちろん、対するバルクホルンも、このまま終わるとは思っていない。 あれほどの気配を纏う敵だ。必ず反撃をしてくるはずだ。その警戒は抱き続けていた。 あの炎が何であるかなど、初対面のバルクホルンには、到底知るよしもない。 だとしても、満を持して現れたあれが、状況打開の切り札であると、予想できない馬鹿でもなかった。 「ハァッ!」 剣を振るう。 炎が躍る。 切っ先を照らしていた炎は、スイングに合わせて魔弾へと変わる。 牙狼剣から放たれた炎が、そのまま飛び道具へと変貌して、バルクホルンへと襲いかかった。 「これしき!」 だが、あくまでもそれだけのこと。 見た目も大きさも派手だが、決してかわせない攻撃ではない。 身をよじってすぐさま回避。そのまま反撃へと転じる。 背後で爆裂の音が響いたが、そんなものには構うことなく、機関砲の射程距離を詰めた。 「フン!」 対するレオンも跳躍する。 黄金騎士ガロが加速する。 互いに真っ向からの突撃。銃撃で返している暇はない。 されどゲルトルート・バルクホルンは、まっすぐしか飛べない敵とはわけが違う。 狙いをつけるより早く、容易く回避することが可能だ。現に牙狼剣は届かず、両者の影は交錯した。 明後日の方向へ跳んだガロへと、バルクホルンは向き直る。今ならあの無防備な背中に、容赦なく銃弾を浴びせられる。 「何ぃっ!?」 その、はずだった。 こともあろうに、目の前の鎧は、空中で停止していたのだ。 否、それはあくまでも一瞬のこと。ガロは次の瞬間には、再びこちらへと飛びかかってきた。 回避不可能。間に合わない。シールドで受け止めるしかない。 魔力の光を展開し、円形の盾として生成する。 「オォォッ!」 「ぐぁっ!」 衝突の勢いは、ガロが勝った。 なにしろフルスピードで突っ込んできたレオンと、ターンのために立ち止まったバルクホルンだ。 踏ん張りも追いつかず、圧力を真っ向から食らったバルクホルンは、悲鳴と共に吹っ飛ばされる。 それでも彼女は屈することなく、空のレオンをなんとか睨んだ。 瓦礫の降り注ぐ空の中、マントをはためかす騎士を見据えた。 そしてようやく目の当たりにしたのだ。奴が空中制御を可能とした、そのとんでもない理由と原理を。 (そんな馬鹿な!?) 驚くべきことに、黄金の騎士は、空中の瓦礫を蹴って進んできたのだ。 跳躍とは足場を蹴ることによって行われる。地面を蹴れば必然的に、上に向かってしか跳べない。 しかし空中で他のものを蹴り、別方向へと跳躍すれば、空中でも軌道を変えることは可能だ。 問題はそんな理屈など、ただの屁理屈でしかないということだが。 「ハッ!」 それでも奴はやってのけた。 降り注ぐ瓦礫を次々と蹴り、着実に角度を修正してきた。 このままではまた激突する。同じように直撃をもらう。 「させるかぁぁぁっ!」 そんなものはまっぴらごめんだ。 あんなちまちまとした小細工ごときに、空のプロが追いつかれてたまるか。 怒号と共に制御をかけて、落下する体を強引に操る。 着地するスレスレで横向きに加速し、地表を滑るように飛行する。 「うぉおおおおっ!」 マシンガンを斉射した。 上空より迫る騎士を狙った。 魔力によって強化された、大口径の弾丸は、瓦礫すら粉微塵に吹き飛ばす。 たまらずガロも瓦礫を蹴って、横合いへと大きく回避する。 立て直したバルクホルンは身を起こし、再び上空へと舞い上がった。 今度こそ届きもしない高度へ、一直線に上昇するためだ。 「ヌォオオオッ!」 「なぁっ!?」 それでも、レオンは止まらない。 黄金騎士は引き下がらない。 こうなると本当に獣のようだ。 今度は何をするかと思えば、校舎の壁面に足を貼り付けたように、垂直に壁を走って上がってきたのだ。 (飛ぶ以外のことなら何でもアリか!?) これ以上相手の距離には付き合えない。 必殺の覚悟でパンツァーファウストを取り出し、金の鎧目掛けて発射する。 爆裂。炎上。煙が上がる。 砕け散った校舎の壁が、無数の瓦礫になって宙を舞う。 これでやったか。さすがに止まるか。 (――こんなもので!) それでも、奴はやって来る。 黄金の魔戒騎士・ガロは、必ず立ち上がり舞い戻る。 黒き煙を切り裂いて、金の光が天に躍る。 壁を蹴って、瓦礫を蹴って、次々と飛距離を稼ぎながら、空の敵へと襲いかかる。 金色に輝く騎士の鎧は、最強の魔戒騎士の証だ。 誰よりも多くの敵を倒し、誰よりも多くの命を守る。遥かな古から受け継がれてきた、最も優れた騎士の証だ。 それが止まることなど許されるものか。 こんな程度の苦境ごときで、立ち止まることなどできようものか。 「ウゥゥオオオオオッ!」 「ぐぅ……っ!」 遂に距離がゼロへと詰まる。 振りかざされた金の剣が、バルクホルンのシールドへ叩きこまれる。 吹き飛ばしはしない。離れない。 緑の炎と魔力の光が、弾け合い眩いスパークを散らせた。 このまま地上に落ちるまで押し込み、限界までシールドに負荷をかける。 忌々しい盾をぶち破り、今度こそとどめを刺してやる。 (そんなこと……!) それが騎士の目論見だろう。 だがそんなことを許すものか。 襲いかかる衝撃の中、歯を食いしばりながら、バルクホルンは思考する。 相手が神話を戦い抜いた、歴戦の英雄であったとしても、そんなことは知ったことか。 こちらもカールスラントの、全ての民の命を背負い、命を懸けて戦ってきたのだ。 これ以上私の戦場で、好き勝手をさせてなるものか。 これ以上この大空を、我が物顔で走らせてたまるか。 私を誰だと思っている。 ゲルトルート・バルクホルンだ。 帝政カールスラントの、誇り高き軍人なのだ。 「カールスラント軍人を――」 瞬間、バルクホルンの姿が消えた。 いいやレオンの視界の外へと、ふわりと身を翻したのだ。 それは回避運動ではない。推進力をカットして、重力に任せて落下したのだ。 「何っ!?」 驚愕にガロが目を見開く。 三次元の戦いとは、何も上に昇るだけではない。 高さを支配するということは、どこまでも上昇するだけでなく、時に下降することも意味する。 敢えて自らの高度を落として、敵の懐へと潜り込んだ。 飛び上がることしか知らないレオンには、思い至らなかった発想だ。 これが空を戦うということだ。 カールスラント軍のウィッチの、空の戦闘技術なのだ。 「――なめるなぁぁぁッ!」 怒号と共に、光が走る。 黄金騎士ガロの腹部を、痛烈な衝撃が襲う。 それは弾丸の直撃ではない。伸びてきたのは大きな筒だ。 バルクホルンの身の丈に、倍するほどの長さを有した、巨大に過ぎるほどの砲身だ。 「なっ――」 レヌスメタルBK-5・50mmカノン砲。 ウィッチの常識を軽々と凌駕し、本来ならバルクホルンすらも、まともに扱えない超巨大兵器。 その重量を制御するには、通常のストライカーユニットでは、魔力の供給が追いつかない。 されど今はゼロ距離だ。狙いをつける必要も、支え続ける必要もない。 この一発だけを叩き込めれば、今はそれだけで十分だ。 「吹き飛べぇぇぇぇーッ!!」 雄叫びが上がった。爆音が上がった。 炸薬が弾け弾頭が飛び立ち、圧倒的な暴力が炸裂した。 巨大砲塔のゼロ距離射撃は、過たずレオン・ルイスに直撃し、学校全体を轟音で揺らした。 ◆ 「すごいわね……」 東郷美森の感想だ。 学校から少し離れた建物の上で、スナイパーライフルのスコープ越しに、戦況を見ていた東郷の言葉だ。 勇者となり現場に追いつきこそしたものの、この戦闘には、彼女は参加していなかった。 それはレオンがさやかを制止し、戦闘に参加させなかった理由と同じだ。 考えなしに飛び込んでいれば、正体を晒すことになっただろう。 そうなれば、学園に姿を現した、あの黄金の騎士のマスターに、命を狙われることになる。 もっとも彼女は、レオンを従えるマスターを、鹿目まどかではないかと考えていたのだが。 (それでも状況によっては、加勢に出た方がいいかもしれない) 戦況は全くの互角だ。 いいや、切り札の50mmカノン砲を、無理やりに使っているからには、バルクホルンの方が不利かもしれない。 もう一つの宝具を使わせる手もあるが、あれは正真正銘の奥の手だ。 これほどの戦いの後で使い、いたずらに魔力を消耗するくらいなら、直接出向いた方がいい。 (ならば、ここは――) 枝先に行かねば熟柿は食えぬ。 リスクを恐れていたならば、勝てる戦いも勝てはしない。 幸いにしてセイバーは、己のマスターを引き連れていない。こちらが先に出て二対一になれば、大きく有利になるはずだ。 そう考え、学校へ接近すべく、スナイパーライフルを引っ込めようとした瞬間。 「……あれは……?」 不意に、レンズに映るものがあった。 視界がズレたその先に、姿を現す何者かがいた。 マスターである東郷の瞳は、その正体を正確に見抜く。 そんなはずはない。鹿目まどかのサーヴァントは、あの剣騎士であったはずだ。 であれば、第三者の存在か。はたまた自分の読み違えか。 「新しい、サーヴァント……?」 いるはずのないもう一人の弓騎士。 想定しなかった三人目の戦士。 自分のバルクホルンと同じ、アーチャーのクラスを持つサーヴァントの姿に、東郷の目は釘付けになっていた。 ◆ 「はぁ……はぁ……」 土煙から浮き上がりながら、バルクホルンは肩で息をする。 無理やり放ったカノン砲は、容赦のない反動を発揮し、彼女を校庭へと叩き落としていた。 エースの肌に土をつけたのは、敵ではなく自分自身の武器だったのだ。 全くもって情けない。こんな真似をしなければならないとは。 「はぁ、はぁ……」 おまけにそれほどの無理をしてなお、未だ敵を倒せてはいない。 対峙する黄金のサーヴァントもまた、息を切らせているものの、五体満足のまま生存している。 であれば、これからどうするか。 マスターの援護を要請し、二対一で仕留めにかかるか。 あるいはもう一つのストライカーを使い、純粋なパワーで圧倒するか。 果たして考えている余裕を、あの黄金騎士が与えてくれるか。 「――そこまでだ」 その時だ。 聞き覚えのない新たな声が、戦場に割って入ったのは。 そしてこれまでに覚えのない気配が、バルクホルンに襲いかかったのは。 「っ……!?」 ぞわり、と肌の産毛が逆立つ。ジャーマンポインターの使い魔の、長い尻尾がぴんと立つ。 彼女とセイバーのサーヴァントが、声の方を向いたのは同時だった。 振り向いた先にあったのは、学校の校舎の入り口だ。 そこから、誰かが歩いてくる。ゆらゆらと揺らめく大気の向こうから、煌々と近寄る光がある。 「これ以上事を荒立てる気なら、今度は俺が相手になる」 がちゃり、がちゃりと具足の音。 地の石を踏み潰す金属の音。 そこから現れた男は――またしても、黄金の鎧だった。 違いがあるとするならば、巨大な翼を背負っていることと、兜を被っていないことだろうか。 剥き出しになった男の顔は、扶桑の人間の顔立ちか。鋭い視線は真っ直ぐに、自分達へと向けられている。 (何だ、あいつは……!?) 対峙するセイバーの宝具も、相当な気配を纏っていた。 だが今現れた鎧の男は、その男ともまた別の存在だ。 纏っている気配の濃さが違う。噴き出る魔力の絶対量が、自分達とは次元が違う。 翼を広げた金色の姿が、二倍にも三倍にも感じられた。 数多のネウロイと対峙し、死闘を繰り広げてきたバルクホルンが、この瞬間だけは完全に、確実に敵の気配に呑まれていた。 (あれはまずい) 本能がそう告げている。 このまま戦ってはいけない。 少なくとも疲弊した現状で、まともにやり合える相手ではない。 《マスター、援護を!》 すぐさまバルクホルンは念話を送った。 すぐ近くまで来ているであろう、東郷美森へと声を飛ばした。 このままタイマンを張るのは危険だ。少しでも勝機に近づくためには、頭数を増やすしかない。 守るべきマスターを頼る情けなさを、ぐっと堪えながらも呼びかける。 《いえ、すぐに離脱してください。彼が構えるその前に》 しかし返ってきたものは、交戦でなく撤退の指示だった。 《しかし、この作戦の目的は……!》 《鹿目まどかの排除は成りませんでしたが、マスターであることは判明しました。 その情報を、キャスターへの手土産にすれば、成果としては十分でしょう》 東郷の言葉はやや早口だ。 このジュニアハイの敷地に入っていない以上、恐らく敵の恐るべき気配を、直接感じているわけではないだろう。 傷を負ったバルクホルンの前に、二騎目のサーヴァントが現れた。それ自体が重要な問題なのだ。 《……了解した》 マスターの命令だ。 であれば、逆らうわけにはいかない。 セイバーにも新たなサーヴァントにも一言も告げず、バルクホルンは霊体へと変わる。 不可視の状態となったバルクホルンは、そのまま速やかに天へと上がり、東郷の居場所へ向かって離脱した。 (なんてザマだ) 情けない。 初戦からこれほどの苦戦を強いられ、おまけにおめおめと逃げ帰るとは。 東郷の心配をする前に、まず自分の無力さを、気にかけるべきだったではないか。 己の不甲斐なさが許せない。涙すら零れそうになる。 しかしそれだけは堪えた。カールスラント軍人たる者、泣き言を言ってなどいられないのだ。 (思ったよりも早く、使い時が来るかもしれない) 己の戦いを振り返る。 己が愛機たる『天に挑みし白狼の牙(フラックウルフ Fw190)』が、優れたストライカーユニットであるのは確かだ。 しかし初戦からこの調子では、それだけでは届かない相手にも、遠からずぶち当たることになるかもしれない。 そうなれば、使うことになるだろう。 己がもう一つの宝具を。 呪いのかかった忌まわしき機体を。 重大な欠陥をその身に宿し、不採用の烙印を押された赤い靴。 かつてその身を蝕んだ、試作型ジェットストライカー――『蒼天に舞え赤鉄の靴(Me262v1)』を。 【D-4/学術地区・一般中学校周辺/一日目 午前】 【東郷美森@結城友奈は勇者である】 [状態]魔力残量6割 [令呪]残り三画 [装備]勇者の装束、『機界結晶(ゾンダーメタル)』(肉体と融合) [道具]通学鞄 [所持金]やや貧乏(学生のお小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯の力で人類を滅ぼす 1.中学校から撤退し、キャスター(=パスダー)の元へと向かう。その際、放置していた車椅子を回収する 2.未来達と協力し、他のサーヴァントに対処する 3.金色のサーヴァント達(=レオン・ルイス、星矢)を警戒 [備考] ※『機界結晶(ゾンダーメタル)』によって、自身のストレス解消(=人類を殲滅し、仲間達を救う)のための行動を、積極的に起こすようになっています。 『機界結晶(ゾンダーメタル)』を植え付けられていることには気づいていません。 ※レオン・ルイスか星矢のどちらかが、鹿目まどかのサーヴァントであると考えています ※小日向未来&パスダー組と情報を交換し、同盟を結びました。 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。 ※D-4の路地裏のどこかに、車椅子を放置しました 【アーチャー(ゲルトルート・バルクホルン)@ストライクウィッチーズ】 [状態]ダメージ(中) [装備]『天に挑みし白狼の牙(フラックウルフ Fw190)』 [道具]ディアンドル [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる 1.中学校から撤退し、キャスター(=パスダー)の元へと向かう 2.金色のサーヴァント達(=レオン・ルイス、星矢)を警戒。特に星矢を強く危険視 3.未来およびキャスターに対する不信感 4.自分でも使いたいとは思うが、聖杯はマスターに優先して使わせる [備考] ※美森の人類殲滅の願いに気付いていません。言いにくいことを抱えていることは、なんとなく察しています ※レオン・ルイスが鹿目まどかのサーヴァントであると考えています ※小日向未来&パスダー組と情報を交換し、同盟を結びました。 同盟内容は『他のサーヴァントが全滅するまで、協力し敵を倒す』になります。 ◆ 撤退したアーチャーのサーヴァントが、どの方角へ行ったのかなど分からない。 故にレオンは目で追うことをせず、目前の相手を真っ直ぐに見据える。 突如として姿を現した、黄金の光を放つサーヴァント。 魔戒騎士と似通っていながら、しかし根本的に異なる意匠を有した、謎の甲冑を纏うサーヴァント。 武器は持っていない。故にクラスが推測できない。 身に纏う気配も相まって、得体の知れない相手だった。何をしでかすか分からない恐ろしさがあった。 「彼女は退いたが、お前はどうする」 低く、されどよく通る声だった。 退かなければ安全は保障しないと、言外に伝えていることは、誰の耳も理解できただろう。 涼しく構えているものの、それだけの凄みが宿っていた。 「……俺だって馬鹿じゃない。この体で、あんたとやり合うつもりはないさ」 こちらは手負い。あちらは無傷。 であれば、他に選択肢などない。 攻撃の意志がないことを示すため、鎧を解除しながら、レオンは言う。 黄金の甲冑が虚空へと消え、白いコートの姿へと戻る。 「俺も目的は果たした。潔く退散させてもらう」 「……そうか」 信用してもらえたのだろう。 翼の鎧を着たサーヴァントは、その場から壁伝いに跳び上がると、校舎の向こうへと姿を消した。 そうして誰もかれもいなくなって、校庭にただ一人になり。 《セイバー! 大丈夫!?》 たっぷり五秒ほどは経った後に、マスターからの念話が届いてきた。 恐らくはこれまでの戦況を、校舎の窓あたりから見ていたのだろう。逃げろと言ったのに、しょうがない主人だ。 《ああ、とりあえず敵は追い払えた。俺もまだ何とか生きてる》 返事をしながら、レオンもまた、自らの体を霊体化させた。 その辺りをきょろきょろと見回して、さやかのいる場所を特定すると、そちらに向かって歩き出す。 《それにしても、すごかったね今の……》 《多分あの金色の鎧が、鹿目まどかのサーヴァントだ》 《あれが!? まどかの!?》 空飛ぶサーヴァントも難敵ではあった。だが今それ以上に気がかりなのは、あの黄金の鎧を着たサーヴァントだ。 彼は自分達をこの学校から、明らかに遠ざけようとしていた。 それは奴の守るべき者が、学校にいることの証明に他ならない。 学校を攻撃した女と、学校を守ろうとした男。どちらがまどかのサーヴァントかは、考えるまでもなく明白だった。 《そっか……本当に、まどかが……》 返ってきたさやかの声は、暗い。 当然だ。守るべきだと考えていた友が、敵であると決まってしまったのだから。 あの美樹さやかのことだ。恐らくこのことに対して、悩み続けることになるだろう。 宿敵の命すら救って、仲間に戻ろうとする少女だ。元からの友人の命など、犠牲にできるはずもない。 (何とかしなくちゃならない、か) 真剣に考える必要があった。 この先美樹さやかに対して、どのように接していくのかを。 そして同時に自分自身も、この先どのように戦うのかを。 自分と互角以上に渡り合い、手傷を負わせた空飛ぶ女。 戦場に突如として割り込んできた、翼持つ黄金の鎧の男。 (特にアイツと戦うのなら……恐らくは、死力を尽くすことになる) 気がかりなのは後者の方だ。 あの絶大な魔力の気配は、明らかに並のサーヴァントのそれではなかった。 恐らくはかのヘラクレスやアーサー王のような、最上級クラスの大英霊。 それほどのライバルがよりにもよって、マスターと同じ学校にいるというのは、はっきり言って最悪だった。 奴と戦うというのなら、こちらも万全を期さなければならない。 持てる力の全てを尽くして、対峙しなければならないような、そういう類の強敵だ。 こうなるとなお、最大の切り札――『双烈融身(ひかりのきし)』を使えないことが、惜しくてならないと思える。 (それにしても……) しかし、そのように考えると、別のことが気になってきた。 それほどの力を有していながら、何故奴は直接戦おうとせず、自分達を追い払うにとどめたのか。 傷を負った自分達ならば、たとえ一人であったとしても、撃退できたのではないか。 (そうまでして、戦いたくない理由があるのか?) 考えにくい話ではあった。 それでも、考えなければならないと思った。 あのサーヴァントの正体を探ることは、すなわち、鹿目まどかとの接し方にも、大きく関わってくることなのだから。 【D-4/学術地区・一般中学校校庭/一日目 午前】 【セイバー(レオン・ルイス)@牙狼-GARO- 炎の刻印】 [状態]ダメージ(中) [装備]魔戒剣 [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターを守って戦う 1.さやかと合流し、今後のことを考える 2.空飛ぶ女サーヴァント(=ゲルトルート・バルクホルン)、および翼の鎧のサーヴァント(=星矢)を警戒 3.翼の鎧のサーヴァントの行動が気になる。もしかしたら、おいそれと戦えない理由があるのかもしれない 4.まどかを敵だと思いたくないさやかに対して懸念 [備考] ※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると考えています ※ゲルトルート・バルクホルンが、中学校を襲撃した犯人であると考えています ◆ 怪物騒ぎから、謎の戦闘。 立て続けに事件が起こったことで、中学校の生徒達は、一様に疲弊しきっていた。 それはまどかも例外ではない。 星矢のおかげで切り抜けたものの、ギリギリの死線を彷徨ったことは間違いないのだ。 「まどか、大丈夫?」 合流したさやかが声をかけてくる。 自身も大変な思いをしただろうに、他人の心配をしてくれるなんて。 その優しさが嬉しくもあり、同時にその気丈さに対して、申し訳ないとも思えていた。 「うん……ごめんね、さやかちゃん」 「ばっか、何で謝るのよ」 額を小突かれ、軽く悲鳴を上げる。 にひひと笑うさやかの顔は、空元気だとしても、元気そうだ。 情けない。本当はマスターである自分にこそ、これくらいの力が必要なのに。 何もできずに逃げ惑っていた自分が、これまでにないほどに貧弱で、惨めな存在に思えていた。 (そういえば、アーチャーさん……) その時、ふと思い出した。 結局あの後アーチャー――星矢は、一言だけ念話を飛ばして姿を消した。 もう心配はない。また何かあったら呼んでくれ。 それだけを短く言い残して、顔を合わせることもなく、即座に学校から離れたのだ。 (やっぱり、無理させちゃったのかな) 理由は察することができる。彼が身に負った怪しげな傷だ。 あれが力の行使を阻害し、魔力を使おうとする星矢の体を、傷つけてしまっているのだという。 であれば、姿を消した星矢は今頃、どこかで苦しんでいるのかもしれない。 逃げられなかった自分のせいで、代わりにサーヴァントの彼が、痛みに喘いでいるのかもしれない。 (私って、本当にダメだ) 自分一人では何もできず、迷惑ばかりをかけている。 そんな自分が情けなくて、一層強く、膝を抱えた。 【D-4/学術地区・一般中学校・一階廊下/一日目 午前】 【美樹さやか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】 [状態]魔力残量6割5分 [令呪]残り三画 [装備]財布 [道具]なし [所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れる 1.レオンと合流し、今後のことを考える 2.翼の鎧のサーヴァント(=星矢)を警戒 3.まどかに対して……? 4.人を襲うことには若干の抵抗。できればサーヴァントを狙いたい [備考] ※C-2にある一軒家に暮らしています ※サーヴァントを失い強制退場させられたマスターが、安全に聖杯戦争から降りられるかどうか、疑わしく思っています ※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると考えています ※ゲルトルート・バルクホルンが、中学校を襲撃した犯人であると考えています 【鹿目まどか@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】 [状態]魔力残量9割、自己嫌悪 [令呪]残り二画 [装備]財布 [道具]なし [所持金]やや貧乏(学生の小遣い程度) [思考・状況] 基本行動方針:帰りたい 1.あまり戦いたくない 2.何かあったら星矢を呼ぶ。令呪による強制転移もケチらずに使う 3.何もできない自分に対して、強烈な自己嫌悪 [備考] ※B-4にある一軒家に暮らしています ※美樹さやかがマスターであることに気付いていません ◆ 《凄かったわ、彼女のサーヴァントは。恐ろしいほどの力を見せていた》 美国織莉子からの念話を、暁美ほむらは静かに受け取る。 それは察していたことだ。屋上に立っている彼女は、あの金色のアーチャーの姿も、現実に目の当たりにしていた。 これまでに相対してきたどの相手とも、明らかに次元の異なる存在だ。 あれこそが神秘を具現化した、サーヴァントというものなのかもしれない。 《あれだけの強さなら、彼女のことは、任せてもいいんじゃないかしら》 《だったら私と合流しなさい。今から行くべきところがある》 まどかから目を離すのは心苦しいが、それでも今のほむらには、為さなければならない用事があった。 故に彼女は織莉子に対して、護衛の任を解かせて合流を指示した。 《行くべきところ?》 《敵のマスター……恐らくは、空飛ぶアーチャーのマスターを見つけた》 《あら、そうなの》 意外だ、と言わんばかりの返答だった。 当然と言えば当然だろう。 仮に学校内にマスターがいれば、未来予知の使える織莉子が、移動中にマスターに遭遇する未来を予知する可能性がある。 それがかなわなかったからこそ、彼女はマスターを、見つけられないと考えていたのだろう。 (敵は学校の外にいた) 実際、標的は校内にはいなかった。 たまたま三階の窓から、偶然校外のビルを見た時、そこに人影を見出したのだ。 彼女が人のいる校内ではなく、誰もいない屋上に立っていたのには、そういう理由が存在した。 (けれど、あれは……) 確かに、マスターの所在は校内ではない。 されどそこにいたマスターは、学校と無関係な人間ではなかった。 魔法少女を思わせる、奇妙な装束を身にまとった、黒髪と大きな胸が特徴的な少女。 自分の隣のクラスにて、まどかと共に授業を受けていた、車椅子を使っていた少女。 この日奇しくも、学校を休んでいたはずだった、東郷美森がそこにいたのだ。 【D-4/学術地区・一般中学校/一日目 午前】 【暁美ほむら@[新編]魔法少女まどか☆マギカ 叛逆の物語】 [状態]魔力残量9割 [令呪]残り二画 [装備]ダークオーブ [道具]財布 [所持金]普通(一人暮らしを維持できるレベル) [思考・状況] 基本行動方針:聖杯を手に入れる 1.一度まどかの守りを金色のアーチャー(=星矢)に任せ、自身は東郷を追跡する 2.まどかを殺すことなど考えられない。他のマスターからまどかを死守する 3.まどかを生かしつつ、聖杯を手に入れる方法を模索する [備考] ※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると知りました ※東郷美森が、何らかの特殊能力を持っていることを把握しました。 同時に状況から察して、ゲルトルート・バルクホルンのマスターではないかと考えています 【美国織莉子(セイヴァー)@魔法少女おりこ☆マギカ】 [状態]健康 [装備]ソウルジェム [道具]なし [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:優勝し、聖杯を手に入れる 1.とりあえずはほむらの言う通りに動く 2.一度まどかの守りを金色のアーチャー(=星矢)に任せ、敵マスター(=東郷)の追跡に向かう 3.まどかを生かすことは、道徳的な意味ではともかく、戦略上はさほど重要視していない [備考] ※令呪により、「マスターに逆らってはならない」という命令を課せられています ※星矢が鹿目まどかのサーヴァントであると知りました ◆ 「ぐぅっ……!」 がちゃり、と金属音が鳴る。 路地裏でうずくまった黄金の男が、壁に手をつきながら呻く。 身に纏う豪奢な甲冑を、輝きと共に解除しながら、男は額に汗を流した。 コート姿のサジタリアス星矢は、膝をついた態勢で、ぜえぜえと苦しげに息を吐いた。 (やはり、この傷は無視できないか……) 外套の下で蠢く闇に、視線を落とし思考する。 マルスによってつけられた魔傷は、小宇宙の燃焼を阻害し、聖闘士を傷つける呪いだ。 故に星矢は、無駄な戦いを避け、敵を威嚇することを選んだ。 割と多くの魔力を一度に燃やし、必要以上に気配を大きくしてみたが、どうやら少々やり過ぎたらしい。 敵を退散させることには成功したものの、結局魔傷から少なからず、ダメージをもらうことになってしまった。 (それでも) 背負ったハンデはあまりにも大きい。 だとしても、苦しんでいる暇などないのだ。 あのいたいけな少女を守り抜き、共にそれぞれの世界に帰るためにも、立ち上がらなければならないのだ。 身を起こし、コートを整えると、星矢はやや覚束ない足取りで、路地裏の闇を進んでいく。 (そういえば……) その時になってようやく、思い出した。 聖衣石になって懐に収まった、己が『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』を見やった。 あの校舎で、死霊の兵士をなぎ倒した時、聖衣が妙な反応を示していた。 何を伝えたいのかは、具体的には分からなかったが、それでも何かを知っているような、そんな印象を抱いたのだ。 (奴らを知っているのか、アイオロス……?) 黄金聖衣はただの聖衣ではない。 その身にはこれまで選ばれてきた、黄金聖闘士達の意志が宿されている。 かつてこの聖衣を纏い戦った、偉大なる前任者の魂が、警告を告げているような。 聖衣石を見つめる星矢には、そんな気がしてならなかったのだ。 【D-4/学術地区・路地裏/一日目 午前】 【アーチャー(星矢)@聖闘士星矢Ω】 [状態]ダメージ(小)、魔傷 [装備]『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』(待機形態) [道具]コート [所持金]なし [思考・状況] 基本行動方針:マスターを守り抜く 1.世界樹から脱出し、元の世界へ帰る方法を探す 2.霊体化ができない以上、どうにかして身を隠す。マスターに呼ばれればすぐに駆けつける 3.聖杯を悪用しようとする者がいれば、戦って阻止する 4.中学校に現れた敵(=エインヘリヤル)が気になる [備考] ※霊体化を行うことができません ※『反魂の葬送騎士団(エインヘリヤル)』について、『射手座の黄金聖衣(サジタリアスクロス)』から、おぼろげに警告を受けています ◆ 「そうか、あの男は手負いか」 ユグドラシル政庁・フレスベルグ。 その市長室でくつくつと、一人笑う男がいる。 赤髪を長く伸ばした男は、ルーラー――アンドレアス・リーセだ。 彼は市長室の席から、事の全てを見下ろしていた。 星矢のマスターが通う中学校で、怪物騒ぎが起きた時、星矢について調べるいい機会だと思った。 故に『反魂の葬送騎士団(エインヘリヤル)』を発動し、亡霊の兵士達を何名か、中学校のまどかへとぶつけた。 「どう処分したものかと考えていたが……おかげで妙案が浮かんだぞ」 その結果手に入れた成果は二つ。 何らかの呪いを受けた星矢が、小宇宙を燃焼させることで、身にダメージを追うようになっていること。 そして怪物の襲撃事件の現場に、星矢が現れたという事実だ。 これは使える。 たとえ最強の聖闘士であったとしても、その力が削がれているのなら、他のサーヴァント達で倒すことができる。 特にキーパーのクラスで現界した、牡牛座の黄金聖闘士の例もある。 同等の存在であるのなら、健康体でいるキーパーの方が、星矢より優位に立つのは必定だ。 「見ているがいい、射手座(サジタリアス)」 既に大義名分は整った。 戦場に居合わせた主従は三組しかいない。 おまけに真相を全て把握しているのは、パスダーの宝具を使用した、ゲルトルート・バルクホルンの組だけだ。 下手人さえ口を塞いでいれば、いくらでも誤魔化しようはある。 そもそも自分の存在を隠したいなら、こちらの報告に異を唱え、真実を伝えようとする理由などない。 「今にこの街の全てが、お前とお前のマスターの敵になる」 学術地区の中学校で、大規模な襲撃事件が起きた。 大勢のNPCが一度に殺害されたことで、ユグドラシルを維持するに当たり、若干の問題が生じるようになった。 このまま犯人を野放しにしていれば、聖杯戦争そのものの続行が危ぶまれる。 犯人は黄金の鎧を着た、アーチャークラスのサーヴァント。 このサーヴァントを排除した者には、今後聖杯戦争を勝ち抜く上で、有利になる報酬を与えよう。 「ははは……」 それがアンドレアス・リーセの紡いだ、事の偽りの筋書きだった。 [全体の備考] ※D-4の中学校にて、怪物の襲撃事件及び、サーヴァントの戦闘が発生。大勢の死傷者が出ました ※第一回放送にて、鹿目まどか&アーチャー(星矢)組の討伐令が発令されることになりました BACK NEXT 祈りと呪い 投下順 求める未来を目指せ 祈りと呪い 時系列順 求める未来を目指せ BACK 登場キャラ NEXT 冷たい伏魔 東郷美森 - アーチャー(ゲルトルート・バルクホルン) - 三様の想い 美樹さやか - セイバー(レオン・ルイス) - 鹿目まどか - アーチャー(星矢) - 暁美ほむら - セイヴァー(美国織莉子) - カーテン・コール アンドレアス・リーセ 第一回定時放送
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_,.. --- 、 / 、ヽ { ' } ト、 | | j! } / / /イ / / / { /、/_ ___ / / / | {\/>, / \ / / ̄ ハ ! | //// _ / ヽ / /! / ヽ |ム {//{ ヽニ二/´};;;;;_>.、 | \ / | / / { |....,./.._} | } !/∧ /〈 〈/ / ヽ >..、 | (●) (ー) | _ !. / {......_,._ィ/.../ _}VI | ∨/ム. /_/ヘ_lヽゝー ヽ ノ7、/ト、.._)...... '´¬‐、`ヽ |l /...... ,. '',~‐ァ゙´` { マ{_j! イ マ/∧ ⊂ -'‐-、 ` ̄`¨/ / / ゙i. 、 ! _┌───┐ l l r┐. / / /_ l,..イ`...i/ム ∨/ム  ̄ ̄´`7ヽヽ、 ゙l'、 `>.,. ' ´ `ヽ 「`ヽ│ l l l | /;゙ ,'´ `ヽ ,.'!......',/ . .[ニ]ハ ,ゝ V, ' '; ' 、 / ;‐'"´ ̄`| | _ l_| _ノ 乂 |_ _ | r'"´ ̄`ヽ; `, ,、' /..... ∨´/>r/} /ト、.. ヽ; ` / , - 、| |丿|. / r、 ヽ`┐┌〃´_`ヽ,.. ‐ 、 ゙; '´ ; '゙.. ∨イ_lノ/ // ≧_、 `ヽ { /'´ ̄ヽ| _ !_{ } | |;;;゙| |.イ f;;;;i i'´ ̄ヽ } /´.  ̄ |! /i //'>゙ヽ;'、 | |`; |'゙冫'´, |;;;゙| |`| ┌─┘ /, ' |! / ゝ l i ..゙`'ー ゙| | l」イ / l |/ | | _i ! _ ‐''´ |! >、/ | | , -' __j 〔_ { じ 「八 `人 `ー'/ |! / l__ / i i ,/.....└ァ‐n‐┘フー'^ー{ _cケ´ r iー'n_.....___ |! ____>--――</ l / >、 ー ┌─────────────────┐゙ .\______,|! _>―'" ; -――――ォ< ,' / / ヘV │ 【R-18】蛇王聖杯戦争【Fate】 ..│゙ .| . . . . . . . . . . . .|Ⅵ ∠_ / > '"´ l / / ヘV ゙└─────────────────┘゙ .| . . . . . . . . . . . .| Ⅵ V `ヽ/ >'" | V,i´ ヾ、// <´ ___. V | . . . . . ./ . . . . . . . . . . . . ヽ ヽ、 〉'" l / _.....ノ/. `>、 ー { . . . . . .{ . . . . . . . . . . . . . .. }  ̄`´ ̄`>、_ ヘ / ー -― \ ` / / ヽ _∠ l /  ̄ `ヽ、\- / / /2015年8月19日 完結 蛇王聖杯戦争@wikiへようこそ このスレはTYPE-MOONの作品『fate/stay night』を元にした安価スレです。 元ネタを知らない人でも安価に参加できるようにやっていきたいと思います。(願望) 以下、簡単な注意事項を。 ※無茶降りに対応できるほど 1の腕は良くないので、安価を取られても採用されない時があります。 ※血や人死が駄目な方はご注意を。 ※このスレ独自の設定やデータが出るときがあります。 ※雑談は自由にどうぞ。みんな仲良く、紳士的に。 ※エターしても泣かない。 ※R-18スレです。18歳未満の方の閲覧はご遠慮ください。 現行スレ http //yaruoshelter.com/test/read.cgi/yaruo001/1437321363/ まとめサイト やるバウト 前作:【聖杯】やる夫は心無いキャスターを召喚したようです【大戦】 まとめサイト やるバウト やる夫AGE wiki 【聖杯】やる夫は心無いキャスターを召喚したようです【大戦】 AAや表を貼る際は #aa(){ここにアスキーアートを貼る} とすること。 中カッコ({}←これ)を含むアスキーアートを入力する場合は、開始と終了の中カッコの数を増やす。 基本的な編集。 @wikiの基本操作 用途別のオススメ機能紹介 @wikiの設定/管理 分からないことは? @wiki ご利用ガイド よくある質問 無料で会員登録できるSNS内の@wiki助け合いコミュニティ @wiki更新情報 @wikiへのお問合せフォーム
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キャラシート【としあきの聖杯戦争TRPG】 【クラス】 【真名】 【容姿】 【願い事】 【その他】 【英雄点】点(ステ点・スキル点):令呪0画消費 【HP】5/5 【筋力】E :1 【耐久】E :1 【敏捷】E :1 【魔力】E :1 【幸運】E :1 【スキル1】 00点: 【スキル2】 00点: 【スキル3】 00点: 【宝具】『』() 1/1 【ランク・種別】ランク: 種別: レンジ: 最大捕捉: 【効果】 +2019/01/01版 泥 【CLASS】 【真名】 【異名・別名・表記揺れ】 【性別】 【身長・体重】cm・kg 【髪色】 【瞳色】 【スリーサイズ】// 【外見・容姿】 【属性】 【天地人属性】 【その他属性】 【ステータス】筋力: 耐久: 敏捷: 魔力: 幸運: 宝具: 【クラススキル】 スキル名 スキル効果 【固有スキル】 スキル名 スキル効果 【宝具】 『宝具名(ルビ)』 ランク: 種別: レンジ: 最大捕捉:人 宝具説明 【Weapon】 『武器名』 武器説明 【解説】 サーヴァントについての解説。 +絆Lv 【キャラクター詳細】 キャラせつめい 【パラメーター】 筋力 ■■■■■:C 耐久 ■■■■■:EX 敏捷 ■■■■■:E- 魔力 ■■■■■:A+ 幸運 ■■■■■:A 宝具 ■■■■■:EX 【絆Lv1】 身長/体重:cm・kg 出典: 地域: 属性: 性別: 一言説明 【絆Lv2】 来歴せつめい 【絆Lv3】 サーヴァントのスタンスせつめい 【絆Lv4】 ○スキル名:ランク スキルせつめい 【絆Lv5】 「宝具名」 ランク: 種別: レンジ: 最大補足: ほうぐるび ほうぐせつめい 【「クエスト名」をクリアすると開放】 こまかいせつめい +絆礼装 礼装名 レアリティ Cost HP ATK ☆4(SR) 9 100 100 効果 ベアトリーチェ(ライダー)装備時のみ、 +20の質問 質問1 真名と現界年齢と性別を教えてください 「」 質問2 身長と体重を教えてください 「」 質問3 出身地を教えてください 「」 質問4 好きな色、自分を象徴するような色はありますか 「」 質問5 特技はなんですか 「」 質問6 好きなものはなんですか 「」 質問7 嫌いなものはなんですか 「」 質問8 天敵とかいますか 「」 質問9 属性について教えてください 「」 質問10 現代での生活について自由に話してください 「」 質問11 貴方の宝具、乗騎、戦術について自由に話してください 「」 質問12 貴方の外見について自由に話してください 「」 質問13 ざっくりとあなたの性格を教えてください 「」 質問14 自分の日本での知名度をどう思いますか 「」 質問15 貴方の適合クラスを教えてください 「」 質問16 聖杯にかける望み、あるいは聖杯戦争参加の経緯を教えてください 「」 質問17 親しい人間について自由に話してください、空欄でも構いません 「」 質問18 自分のマスターをどう思いますか、空欄でも構いません 「」 質問19 理想のマスター像を教えてください。それに対して今のマスターは何点ですか 「」 質問20 なにかこちらに質問はありますか 「」 今回はありがとうございました。あなたの望みが叶うことを願います +セリフ集 ●サーヴァント名 一人称: 二人称: マスター: キーワード : : 召喚 「」 レベルアップ 「」 霊基再臨 「」 「」 「」 「」 戦闘セリフ 戦闘開始 「」 「」 スキル 「」 「」 カード 「」 「」 「」 宝具カード 「」 アタック 「」 「」 「」 EXアタック 「」 宝具 「」 ダメージ 「」 「」 戦闘不能 「」 「」 勝利 「」 「」 マイルーム会話 「」 「」 「」 「」 好きなこと 「」 嫌いなこと 「」 聖杯について 「」 絆Lv.1 「」 Lv.2 「」 Lv.3 「」 Lv.4 「」 Lv.5 「」 イベント 「」 誕生日 「」
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【英数字】【あ行】【か行】【さ行】【た行】【な行】【は行】【ま行】【や行】【ら行】【わ・を・ん】 【サーヴァント】 今更説明するまでもないが、聖杯戦争においてマスターが使役する唯一にして最強の従者。 ここでは主にベースとなったFate/Extraの設定に準拠で解説。 実在・架空を問わず、ムーンセルが人類史に存在する英雄を一時的に誇張・再現して召還した存在。 人類史を記録したムーンセルのデータベースから再現された英霊である。 その英雄またはマスターの特性に応じて、7つのクラス「セイバー」「ランサー」「アーチャー」「ライダー」「アサシン」「バーサーカー」「キャスター」のいずれかに据えられる。 基本的には召喚者であるマスターと何らかの縁がある英霊もしくは相性の良い英霊が選ばれるとされている。 二次二次においては(例外はあるが)予選を突破することで初めてサーヴァントを召還する事が出来る。 版権クロスオーバーということもあって、あらゆる漫画、アニメ、ゲーム等からキャラが召還されており非常にバラエティ豊か。 パロロワ常連から滅多に見かけないレアキャラまで人選は様々である。 尚ムーンセルの聖杯戦争がベースではあるもののエクストラスキルの存在も確認されており、 作中ではオルステッドが二重召還スキルによってアヴェンジャーとしてのスキルや宝具を備えている。 【裁定者】 聖杯戦争を管理する監督役。ルーラー(ジャンヌ・ダルク)、カレン・オルテンシアが該当する。 主な業務はNPCの保護、残り人数の通達、ルールを破ったチームに対する警告・処罰。 ただし処罰に関しては「啓示スキルを頼りにルーラー自ら現場に赴き状況を判断する」という傾向が強く、 違反の証拠を掴めず対応が出来ないという状況も確認されており参加者の動向を完璧には把握していない。 接触さえ出来れば聖杯戦争に関する質問も行える模様。 ルーラーは全てのサーヴァントに対する令呪を二つずつ所持しており、令呪による処罰を行うこともある。 カレンも令呪を所持しているが、ルーラーと同等の効果であるかは不明。 パロロワ風に言えば「進行役」なのだが、参加者に対して積極的な介入を行うという点で大きく異なる。 参加者達にもその存在は当然認知されており、裁定者による処罰を恐れて慎重に行動する者、 裁定者に関する考察を行う者、裁定者打倒を視野に入れる者など様々な動きを見せている。 裁定者の詳細な権限は聖杯側によって秘匿されている。尚、カレンはルーラーのマスターではない。 【参戦サーヴァントの傾向】 全体的に何故か邪悪。 反英雄要素を抱えるなど、やたら悪役じみたサーヴァントが多い。 主な例を挙げると 魔界の神の異名を持ち、地上界の消滅を目論む大魔王バーン ナチス残党でありロンドンを焦土に変えた戦争狂少佐 15年以上に渡り48人の女性を殺害してきた連続殺人鬼吉良吉影 扇動によって自らの手を汚さず幾つもの惑星を滅ぼしてきたベルク・カッツェ 箍の外れた愛の力で世界の理を変貌させてしまった暁美ほむら 無論まともな英雄も存在するが。 【サンドイッチ】 パンに肉や野菜等の具を挟んだり、乗せたりした料理のこと。 食べる際に食器や食卓などを必要とせず、手づかみで食べられる。 簡単に調理でき、携帯も容易。 工夫次第で栄養バランスも取れる。 などと言った理由から世界中でよく食され、この『方舟』でも重宝されている。 具体的にどのくらい重宝されているかというと 029[初陣]佐倉杏子 033[新しい朝が来た、戦争の朝だ]武智乙哉 034[既視の剣]岸波白野、エリザベート・バートリー 046[何万光年先のDream land]ホシノ・ルリ、ジャンヌ・ダルク 053[落とし穴の底はこんな世界]寒河江春紀 061[戦場に立つ英雄/台所という名の戦場]衛宮切嗣 076[衛宮とエミヤ]衛宮切嗣 078[aeriality]岸波白野、クー・フーリン 081[そして、もう誰にも頼らないのか?]吉良吉影 082[最初の使者]少佐(ホットドッグ) 58人中11人。実に、参加者の約2割がサンドイッチを食べている。 なお、サーヴァントは食事を必要としないことを改めて追記しておく。 【セイバー】 『剣士』のクラス。参戦数は三体。 高いステータスと対魔力が保証されることから最優のクラスと呼ばれる。聖杯戦争の花形サーヴァント。 その能力値からどんな状況にも対応できる万能さがウリとされている。 初代セイバーであり今や型月一のドル箱アイドルのアルトリアの原作での(諸々の制約による)苦戦続きから一時最優の称号が疑問視されていたが、他セイバーの数が増えるにつれその評価も改められ、相対的にアルトリアさんの名誉も守られるに至っている。 今回選ばれた三体のセイバーもいずれも劣らぬ強力な英霊で、現実での知名度も相応のものとなっている。 眩しいくらいの正統派勇者、その暗黒面ともいえる元勇者の魔王、そしておっぱいもとい最大出力なら随一のおっぱい聖人。 強いだけでは務まらないのが聖杯戦争とはいえ、単騎でも形勢をひっくり返せるような信頼感は流石の一言だろう。 【聖杯狙い】 参加者のスタンスの一つ。聖杯を手に入れるべく行動する方針のこと。対義語は対聖杯。 戦争に勝ち残ることが聖杯入手の条件なので、聖杯狙い=マーダーと考えて差し支え無い。 通常のパロロワと違う点は聖杯で願いを叶えるべく戦う決意をした者が多いということ。 願いを抱えていた為に方舟へ転送された者、自ら情報を集めてゴフェルの木片を入手した者などその経緯は様々。 何にせよ、聖杯狙いのスタンスを掲げる参加者は対聖杯に比べて圧倒的に多い。 積極的に攻撃を行うチーム、情報収集や様子見に徹するチーム、策謀を張り巡らすチームなど様々な動きを見せている。
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登場サーヴァント(七つの家で聖杯戦争シリーズ) 第一回(第二次) 周防の大蝦蟇 ★ 静御前 イリヤー・ムーロメツ ハンニバル・バルカ ウールヴヘジン サッフォー ハサン・サッバーハ(獣) 安徳天皇 第二回(第三次) ハドリアヌス(TS) ★ バヤズィト1世 アンナ・イヴァノヴナ 羽柴秀吉(騎) イヴァン4世(狂) デルピュネー ソニー・ビーン 崇徳上皇 バルバトス 第三回(第四次) オルフェウス ★ ジュリアス・シーザー ムーラン(花木蘭) ヒルデブラント クルースニク(A) 高長恭 アルブレヒト・フォン・ヴァレンシュタイン スキールニル グナエウス・ポンペイウス 李逵 細川忠興 ダユー ドミティアヌス 道場法師 第四回(第五次) 鳥山石燕(佐野豊房) ★ ヴィテゲ スレナス レプロブス パイア(騎) ハイルブロンの怪人 ※赤字はwikiにデータが存在しないサーヴァント ※★は特に出番が多かったサーヴァント(主役鯖など)
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13 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 49 33 承太郎・セイバーの出だし 承 (聖杯戦争ねぇ・・・ ったく、ジジイのせいでまた変なのに巻き込まれたぜ・・・) 承 「ほれ、セイバーとやら ここなら邪魔が入らずゆっくり話ができる。 教えてもらおうか その聖杯戦争とやらのことをな」 町の片隅にある公園。公園と言うよりは平野と呼んだ方がしっくりくるかもしれない。 だだっ広い野原に遊具があるわけでもなくただ申し訳程度に所々に木が植えてあり、それにあわせてベンチが数箇所に設置されてるだけだ。 だが不思議な事に、地元住人からは人気はない。 杜王町ガイドブックによれば 「一言で言えば『気味が悪い』場所。数年前にちょっとした事故があり それ以来開発の案が出るわけでもなく、市から半ば放置されている。 住民の噂によればお化けがでるとか。 オカルト好きなら一度は立ち寄ろう。お勧め度★☆☆☆☆」 との事らしい。 今も承太郎とセイバーを除けば散歩をしてる男性が1人いるだけだ。 多くの人とは違い承太郎はこの場所が好きだった。 もともと人通りが多いところは好きではないし、ここなら派手に喧嘩をしても目立たない。 セ 「貴方───、本当に何も知らないのですね。貴方のような方がマスターになるとは・・・・・・」 承 「いいから説明してくれ、こっちだって好きでマスターになったわけじゃあないんでね」 セ 『わかりました。ではまず『聖杯』のことから、いえ『魔術』の説明からはいりましょう・・・・・・」 14 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 50 28 承 「・・・・・・つまり聖杯を手に入れれば願いが、魔術師とやらの目的が果たせるってわけか」 セ 「簡単に言えばそうですね。それでその───、太郎はどうするのですか? 聖杯目的で私を召喚したわけではないのでしょう?」 承 「どうするも何も、あんたが出てきたのは事故だからな。オレは別に聖杯ってのに興味があるわけでもねぇ、 降りかかる火の粉は払うが こっちから何かしようって気はない。・・・・・・まあ知らん振りを決め込むだけだ・・・」 セ 「そう───ですか、」 承 「………不満か?」 セ 「私の目的は聖杯を手に入れることですからね・・・、かくなる上は────」 ━━━━━━━━不穏な空気が流れる二人の間に、 散歩途中の青年が あまりにも場違いな陽気な声調で、割って入ってきた─── 青年 「よう! あんた『空条承太郎』ってんだろ?」 承 「なんだ お前は……? 邪魔だから向こうへ行ってくれないか───」 青年 「ああーっと、言いたいことは色々あると思うが、とりあえず、再起不能になってくれ」 突。 何処から取り出したかは知らないが、青年はその手に槍を持っていた。 そしてその槍の先端は承太郎の左肩をいとも簡単に、まるで濡れたティッシュを突くが如く貫いていた。 ────否、貫ていたずだった。 15 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 51 39 承 「野郎ッ!!」 セ 「太郎ッ!!」 青年の繰り出した槍は二つの要因で承太郎に届くことはなかった。 一つ、承太郎のスタンド・スタープラチナが槍を掴み、 一つ、承太郎の左肩には風の塊のような見えない『なにかが』守っていた。 青年「ひゅ~♪ やるねぇ、二人とも・・・っと!! 破ぁッ!!」 青年は捻りを加え、円運動の要領で今度は柄を使い攻撃してくる。 右肩を、 打、 太腿を、 突、 拳を、 刺、 両足を、 払。 獣の速さで的確に狙ってくる。 対する承太郎も常人では到底不可能な速さで、弾き、いなし、そらし、避わす。 獣が六つ目の牙を剥くより先にセイバーの不可視の風塊が槍の青年を襲う。 セ 「太郎ッ! 下がってッ!!」 青年 「ッと、嬢ちゃんが『セイバー』かい?」 セイバーの一撃をかわしつつ、両者の間が、ひらく。 16 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 52 37 承 「野郎、新手のスタンド使いか!?」 青年 「やっぱ、あんたも使えるんだな。スタンドとやらを、しかも中々の使い手と見える」 セ 「太郎、傷はありませんか? ・・・・・・あなたは『ランサー』?」 槍 「正解。嬢ちゃんが最後に召喚されたっていうサーバント『セイバー』だろ?」 セ 「・・・・・・召喚そうそう狙われるとは私の幸運も大したことないようですね。 ・・・それより太郎、今のヴィジョンは『スタンド』という魔術ですか? 一般人がサーバントの攻撃を防げるとは思いません。 あなたはいったい・・・何者です?」 承 「………」 槍 「嬢ちゃん何も知らないんだな。なんなら親切でハンサムなオレが教えてやろうか? おおっと、そんなに睨むなよ折角の美人が台無しだぜ。 ────どうやら今回の聖杯戦争は『特別』らしいぜ。なんの因果か知らんが、何でもマスターが全員スタンド使いらしい。 魔術師兼スタンド使いってのもいるだろうが、大抵はちょっと魔術をかじった奴か────あんたの様に事故か 『スタンド』ってのは、ああ横の兄ちゃんに聞いたほうが早いだろうが、ま・簡単に言えば超能力、異能ってとこか? 雲の上の野郎の気まぐれか知らんが、今回の戦争に限っていえば『マスターはサーバントより強い』。 こんな風にな」 パチンッ、とランサーが指を鳴らした。 17 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 53 25 承 「なにぃぃぃぃぃーーーーーーーーーーーーーッ!!」 セ 「グッ・・・・・・・・・・・バ・・・カな・・・・・」 砂が、セイバーの体を覆っていた。いやそれは覆っていたなんて生易しいレベルではなく『押し潰し』ていた。 承 「オラオラオラオラオラオラオラオラオラ オラァッ!!」 ラッシュ、ラッシュ、ラッシュ。機械より正確な動きでセイバーの周りの砂を『殴り払って』いくスタープラチナ。 が、払っていく横からセイバーを取り込んでいく砂。 いつの間にかランサーの横にはチョコンと一匹の犬が存在していた。 承 (いつの間に犬が・・・ まさか奴がスタンド使いかッ!!) 槍 「無駄だって。拳で砂が殴れるか? 剣で砂が斬れるか? ったく、嫌な世の中になっちまったよな~、な~んでカッチョいいサーバント様が犬の為に隙を作らなきゃいかんのかね。 おい! 人の足にケツを乗せるなっての! ・・・・・・あ~、安心しろよスタンド使いの兄ちゃん。 別にアンタを殺そうってんじゃない、ただそこの嬢ちゃんに消えてもらって あんたには他のサーバントと再契約できないように ちぃっとばかし入院してもらうだけさ。よかったなうちのマスターが殺し嫌いで。普通なら問答無用で殺してるとこだぜ?」 ランサーが槍の柄を承太郎に向ける、見逃してはくれないようだ。 承 (どうする? セイバーを見殺して逃げるか? ) 18 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 55 04 …………んな事できるわけないだろうがよ!! 始想、展開、認識、意識を───集中させろ、限界を───超えろ、世界を───止めろ。 瞬時に世界とリンクする、(大丈夫。いつもの様にちょとだけ、ほんの少し光りよく速く動くだけだ・・・) 承 (スタープラチナッ!! 時よとまれッ!!) 承 「オラァ!」(まだミンチにはなってないようだな・・・) 止まった時の中でスタープラチナで砂の塊からセイバーを探りだす、もう少し遅ければ肉隗になっていただろうか? セイバーを引きずり出し砂から離し容態をみてみる。 少女の体は内臓まで砂が詰まっているようだった。 承 (今はここまでが精一杯か・・・奴らをぶちのめす時間はナイ・・・・・・時は動き出す・・・・・・・) 槍 「じゃあ少し眠っててもらおうか・・・・・・。おい、今何をした?」 (オレは一瞬だって目を離していない、奴のスタンドは────瞬間移動系の能力、それもマステレポーションか? ちぃ、逃げられたら面倒だな・・・) 犬 「?」 セ 「ゴホッ───、ゲホッ!」 承 「大丈夫か? ・・・・・・あんたは少し下がってろ 奴らはこの空条承太郎がじきじきにぶちのめす」 セ 「ゲフッ! ダ───メ、逃げて、ください、奴らは私にも判らない未知の能力を 持っています、 貴方なら スタープラチナの時止めで十分逃げれるはずです。ここは一旦引くべきです」 承 「…………おい、今なんと言った?」 セ 「ここは私が引き止めます、だから貴方は逃げてください、と」 承 「そうじゃあない、・・・今『スタープラチナ』って言ったよな? それにその能力も知っていた・・・」 セ 「………………」 承 「オレはお前にスタンドのヴィジョンは見せた、しかし『名前』は言っていない。『能力』も教えていない。 お前はオレのスタンドを『知らない』はず!! ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ つ じ つ ま が 合 わ ない!! これは現実ではない!! オレの心が見てる『幻覚』だッ!!」 19 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 56 03 ────承太郎とセイバーが幻覚を魅せられていたベンチから100Mほど離れた場所の木の陰で二人の男性が話していた。 弓 「・・・・・・凄いな、彼気がついたぞ君の幻覚に。君の能力は既に魔術の域に達してるのにな」 プ 「まさか気づくとはね・・・もう少し寝てもらえればDISCを抜き取れたのだが・・・」 弓 「だから言ったろう? 寝ている間にオレが射ろう、と」 プ 「いくら私でも死人から記憶のDISCは取れない・・・ 何度も言ってるはずだ『天国』に行く為には空条承太郎のDISCが必要だと。 DIOの残した文献に聖杯戦争のことが載っていたが、『彼』は聖杯を使わずに天国にいく方法を示した。 いざとなれば聖杯も使うが・・・・・・やはり彼が最初に示した方法で私は天国にいきたいのだ。 ・・・・・・それに君は聖杯なんてどうだっていいのだろう?」 弓 「・・・まあな。オレ独りが足掻いた所で世界は何一つ変わらないのだから。 だがもし君の目指す『天国』とやらが、オレの知ってる世界と変わりないようなら・・・ いや、むしろ酷くなってるようなら、オレは君を切り捨てるぞ。例え後ろからだろうと」 プ 「もしそうなったら───────、いや、 そうならない事を祈ってるよ」 20 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 57 40 承 「起きたか? セイバー」 セ 「太郎・・・? 今までのは夢・・・?」 承 「らしいな・・・どうやら敵に 二人同じ夢を見せられていたようだ・・・。立てるか?」 セ 「ええ・・・きゃっ」 承 「っと、」(どうやら相当体力を使ったらしいな・・・。こんな華奢な体で本当に闘えるのか・・・? ったく、面倒ごとに巻き込まれるのはジジイの血を受け継いだせいか・・・) 承 「・・・・・・おい、セイバー。オレは聖杯戦争とやらに参加するぜ・・・」 セ 「本当ですかっ!? でも、貴方は聖杯に興味などないのでしょう!?」 承 「・・・・・・別に興味はない。ただ、あんたに力を貸したいと思っただけだ。ただ、それだけだ」 セ 「ああ、ありがとうございます!!」 承 「………………やれやれだぜ」 セ 「それでそのぅ・・・非常に言いにくいのですが・・・・・・」 承 「ん? なにかあるのか?」 セ 「あのぅ・・・魔力を・・・・・・何というか・・・・・・・・・・補給して欲しいのですが・・・」 承 「・・・・・・・・・何?」 21 名前: 僕はね、名無しさんなんだ 投稿日: 2006/03/31(金) 16 58 42 承 「・・・・・・具体的になにをすればいいんだ?」 セ 「えーと・・・ナニをすればいいわけですが・・・・・・・」 (このあと太郎とセイバーがエッチィ事するんだけど参考になりそうな文よんでたらゴニョゴニョして疲れた北し18禁はまずいからオチだけ書くよ。 なんか途中までして太郎が「なんかわからんが辻褄があわない!!」とかディアボロっぽい事言って 目覚めたら太郎の部屋で ジョニィがライダーとセイバーの二人で3Pでゴニョゴニョしてて ジョ「あれ? 承太郎兄貴起きたの・・・? いや、はは、なんて言うかそのライダーもセイバーもいい女だから、えーと、あの何て言うか、ゴメン兄貴」 太郎「・・・・・・・・やれやれ、哀れすぎて我が弟ながら何も言えねぇ。丈助に治してもらう覚悟はできたか? オレはできてる」 みたいなオチが書きたかったけど前振りが長すぎて疲れたから加筆&修正&ここおかしくね? 見たいな事は暇な奴等がしたらいいじゃない もうオチが浮かばなかったら「辻褄があわない」でいいじゃない。
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『わたしは夢を見た、その夢はある人の記憶』 「杏寿朗」 「はい!母親!」 「よく考えるのです。母が今から聞くことを。なぜ自分が人よりも強く生まれたのか分かりますか?」 「うっ……分かりません!」 「弱い人を助けるためです。生まれついて人よりも多くの才に恵まれた者はその力を世のため人のために使わねばなりません。天から賜りし力で人を傷つけること、私腹を肥やすことは許されません。弱き人を助けることは強く生まれ者の責務です。責任を持って果たさなければならない使命なのです。決して忘れることなきように」 「はい!」 「私はもう……長くは生きられません。強く優しい子の母になれて幸せでした。後は頼みます」 「うまい! うまい! うまい!」 「煉獄さん食べ過ぎ!?」 「うまい!!」 とある店に少女と青年がいた。 ひとりは赤いグラデーションがかかった髪をしていて、御刀を持った少女。彼女の名前は安桜美炎。今回の聖杯戦争をの参加者である。 もうひとりは炎を思わせる焔色の髪と眼力のある瞳をしていてる青年。彼の名前は煉獄杏寿郎。今回の聖杯戦争で美炎が召喚したセイヴァーのサーヴァントである。 どうやら二人でお昼を食べていたようだか……。 「うまい!!」 「まだ食べるの!?」 そして、しばらくして……。お昼を食べた二人は聖杯戦争の話をしていた。 「安桜少女! 君の願いはなんだ!」 煉獄が願いについて美炎に聞く。 「わたしには誰を犠牲にしてまで叶えたい願いはないかな。わたしはこの聖杯戦争を止めたい!」 「そうか! 俺の願いは誰も死なせないことだ! だから君の力になろう!」 「うん、ありがとう! 煉獄さん!」 美炎は煉獄に笑顔でお礼を言う。 「話も終わったし、なにか食べたよう!!」 「まだ食べるの!?」 この二人の聖杯戦争はどうなるのか。 【サーヴァント】 【クラス】 セイヴァー 【真名】 煉獄杏寿郎 【出典】 鬼滅の刃 【性別】 男性 【ステータス】 腕力B 耐久B 敏捷A 魔力B 幸運C 宝具A 【属性】 中立・善 【クラス別能力】 カリスマ:B 軍団を指揮する天性の才能。団体戦闘において自軍の能力を向上させる。 対英雄:B 英雄を相手にした際、そのパラメーターをダウンさせる。ただし反英雄には効果は薄い。 【保有スキル】 単独行動:A マスターから魔力供給を断ってもしばらくは自立できる能力。 ランクAならば、マスターを失っても一週間は現界可能。単独でも最後まで戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。 戦闘続行:A 最後まで戦い続けた彼の逸話が昇格したスキル。 【宝具】 『煉獄』 ランク:A 種別:対人宝具 レンジ:1~100 最大補足:1000人 彼が使う炎の呼吸の奥義が宝具になったもの。敵を一気に殲滅する。 【人物背景】 『鬼滅の刃』の登場人物。 『鬼殺隊』の『炎の柱』にして、『炎の呼吸』の使い手。 正義感が強く、明朗決活で豪快な性格。 面倒見の良い性格でもある。 彼の最期は『上弦の参』である『鬼』の『猗窩座』との戦いである。その戦いで彼は死亡するが、その意志と想いはとある少年たちに託された。 【サーヴァントとしての願い】 誰も死なせないこと 【方針】 マスターに任せる 【把握素体】 原作漫画及び、アニメシリーズ&劇場版 【マスター】 安桜美炎 【出典】 刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火 【性別】 女性 【能力・技能】 『写し』 刀使の基本戦術で、最大の防御術。 『迅移』 刀使の攻撃術の一つ。通常の時間から逸して加速する。 『八幡力』 筋力を強化する。 『加州清光』 彼女が使う御刀。 【人物背景】 ゲーム『刀使ノ巫女 刻みし一閃の燈火』の主人公。『美濃関学院』所属の中学二年生。 前向きで真っ直ぐな性格。人懐っこい性格でもある。 アニメの主人公『衛藤可奈美』とは友人でもあり、ライバルでもある。 参戦時期はゲーム終了後である。 【マスターとしての願い】 特になし。聖杯戦争を止める。 【方針】 協力してくれるマスターを探す。 【ロール】 とある学園の生徒で刀使。 【把握素体】 ゲーム及び、OVA
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いくつもの不運と幸運を重ねて 時は待たない。 全ての者に平等に結末を運んでくる。 電子世界の冬木市に僅かに陽の光が差しはじめた頃、枢木スザクは小鳥の囀りで目を覚ました。 「……夜が明けてきたのか。 本当に現実と変わらない世界なんだな、ここは」 大して疲労の抜けていない身体を起こし、スザクは先ほど潜り込んだこの家を物色し始めた。 本来ならもっと睡眠を摂るべきなのだが、昨夜の激戦のせいかはたまたバーサーカーへの魔力供給のせいか、強い空腹感に苛まれていた。 それに一度目が覚めてしまったせいか、腹を満たしたとしてもすぐには眠れそうにもなかった。 そこでまずは食糧を探すことにした。 食糧はすぐに見つかった。 何しろここは普通の民家、台所を探せば食べ物が見つかるのは当たり前の道理だった。 スザクはいくつかの菓子パンとバナナ、そして牛乳を選び取ると自分でも驚くほどのスピードでそれらを貪った。 そうしていくらか空腹を満たした後、今後の戦略を考えることにした。 やはり目下最大の敵は他二人のマスターと共に柳洞寺に立て篭っているルルーシュだ。 ランサーの言によれば柳洞寺は自然のマナが集まる霊脈であり、サーヴァントの回復には最適の場所であるらしい。 おまけに周辺には霊的な結界まであり、正面以外から侵入したサーヴァントは能力値を軒並み低下させられてしまうらしい。 まさに攻めるに難く守るに易い要衝の地。早々にそのような場所に目をつけさらには二人のマスターを抱き込んだルルーシュの手腕は流石と言う他無いだろう。 加えてそこに集うサーヴァントも粒揃いだ。 バーサーカーと同じ円卓の騎士であるガウェイン、そして彼ら円卓を従え十二の会戦に勝利し、かつてのブリテンに繁栄を齎したアーサー王。 また、宝具を無効化する宝具、太極図を備えたライダー。 太極図というありふれた単語だけでは真名を完全に絞り込むことはできないが、ランサーから聞いた中華風の装いと併せて考えれば中華系、それも宝具の性能から察するに神話の人物であることは疑いない。 最後の決め手は鳴上悠がマスターとしての透視能力で見たという軍略のスキル。 これら全てに該当し得る人物は多くはない。 その中で最も知名度と可能性が高い人物と言えば世間では釣り人の代名詞として知られる周の軍師・太公望だろう。 いずれも神話のメジャー級の英傑ばかりであり、まともに戦えば苦戦どころでは済まされない。 「そうだとしても、時間を掛けすぎるわけにはいかないか…」 しかしルルーシュをよく知るスザクは例え拙速と言われても可能な限り早期に柳洞寺を攻めるべきではないかと考えていた。 確かにルルーシュの頭脳とギアスは脅威だ。 だが彼とて無から有を生み出せるわけではないのだ。 故に、ルルーシュが準備を完全なものにする前ならば決して倒せないことはないはずだ。 逆に言えば、時間はスザクにとっての敵でありルルーシュにとっての味方なのだ。 それにサーヴァントの戦力でも大きく劣っているとは思わない。 自身のサーヴァント、ランスロットは言うに及ばず鳴上悠のサーヴァント、クー・フーリンも円卓の騎士に勝るとも劣らぬ大英雄だ。 もう一人の同盟相手である衛宮切嗣のライダーだけがやや未知数な面が強いのがネックといえばネックだが。 「そしてもうひとつ、衛宮切嗣と鳴上悠のどちらを残すか……」 当たり前だが、最終的には優勝を目指す以上柳洞寺攻略後のことも見据えなければならない。 そして衛宮切嗣と鳴上悠の間に(理由はわからないが)因縁がある以上この三者同盟はそう長続きしないだろうことは想像に難くない。 柳洞寺に篭った三組のマスター達という共通の敵がいるからこそ辛うじて成立している同盟であることをスザクは正しく理解していた。 そうである以上、柳洞寺を攻略した後は両者を天秤にかけてどちらかを切り捨てる必要が出てくるだろう。 「…やはり、より危険なのは衛宮切嗣の方だろうな」 スザクが見た限り衛宮切嗣という男からは人殺しのプロ、有り体に言えば暗殺者のような雰囲気が感じられた。踏んだ場数も向こうの方が遥かに上だろう。 先ほどの戦闘とその後の交渉でまんまと出し抜けたのはひとえに戦闘中に乱入し、奇襲をかける事によって多大なアドバンテージを得られたからに他ならない。 幸いバーサーカーは衛宮切嗣のライダーに対しては相性が良いようだが戦闘中のやり取りから察するにライダーにはバーサーカーすら打倒し得る切り札が存在する可能性がある。 何より衛宮切嗣はステータスと宝具が隠蔽されている筈のバーサーカーの能力を何故か以前から知っていた節がある。これは断じて看過して良い問題ではない。 先ほどは鳴上悠の首を献上すると言ったが、あんなものは交渉をスムーズに進めるための方便だ。 あちらもそこまで本気にしてはいないだろう。 対して鳴上悠はマスターとしては反則的なまでに万能かつ強力な術(ペルソナと言うらしい。心理学用語のペルソナと関係があるのだろうか?)を持つ反面、人間同士の殺し合いには慣れていないように見受けられた。 むしろ、どこにでもいる普通の学生と言った方が違和感が無いぐらいだ。 御しやすさという点で言えば衛宮切嗣よりもずっと楽な相手だといえる。 事実先ほどは生殺与奪を握っていたとはいえあっさりとこちらの望む条件を呑ませることができた。 今はペルソナを使えなくなっているようだが、当面戦力的にはランサー(魔力供給の途絶は一時的なものだったらしい)が加わるだけでも十分だ。 むしろ最終的には死んでもらうことを考えればずっとペルソナを使えないままで良いとすら思っている。 何よりも彼らは令呪で丸二日間こちらに攻撃できない状態にある。これを活かさない手はない。 「決まりだな。衛宮切嗣には早々に消えてもらった方が良い」 呟きながら今後の方針を固めていく。 体力が回復次第柳洞寺に攻め入る。最優先目標はルルーシュの殺害とバーサーカーの足の傷の治癒だ。 そしてその段階で上手くライダーを消耗させ、鳴上悠と共謀して衛宮切嗣を葬る。 彼からすれば衛宮切嗣は相性の悪い相手だ。謀殺を提案すれば喜んで乗ってくることだろう。 その後は令呪の効果が切れるまでは鳴上悠との同盟を維持する。 大雑把だがこんなところで当座は問題ないだろう。 戦場では何が起こるかわからない以上、細かい部分は臨機応変に対応せざるを得ないだろうがそれは仕方ない。 頭の中で今描いたシナリオを反芻しつつ、再びスザクは休息しようとしていた。 だが、彼はもう少しだけ慎重になるべきだったのかもしれない。 聖杯戦争を勝ち抜くためのシナリオを描いているのは何もスザクだけではないのだから。 「っ!?」 突如、地震のような揺れと大気が震えるような感覚に襲われた。 何が起こったのか確認しようと外に出ようとした瞬間、凄まじいまでの轟音とともに玄関が破壊され、大量の破片やガレキがスザクを襲った。 「……?」 だが、予想に反してスザク自身には何の痛みも衝撃もやって来ることはなかった。 実体化したバーサーカーがその身と支配下に置いたドラグブラッカーを盾にしてスザクを守ったのだ。 その動きはただの理性を失った獣では有り得ない、主君、いや、友を守るための騎士のそれだった。 「…ありがとう、バーサーカー」 感謝の言葉を口にして、前方を睨む。 そこには、自分達を襲撃してきたであろう巨大な馬に跨った巨漢の姿があった。 巨漢は馬から降りると宝具だったのであろうそれの実体化を解き、威風堂々と立ちはだかってきた。 そしてその後ろから、マスターと思しき海藻のような頭髪の少年が現れた。 遡ること数時間前、間桐慎二は大いに困惑していた。 「…は?月海原学園?」 自宅で羽瀬川小鳩との“お楽しみ”に時間を費やした後、ライダーとキャスターを引き連れて獲物を探しに夜の深山町に繰り出した彼が遠目に見たのは普段通っている穂群原学園とは似て非なる形の校舎だった。 何事かと思い立ち寄ってみると、そこには穂群原学園は影も形もなく、代わりに月海原学園なる学校があった。 「な、何なんだよこれ?」 例え聖杯戦争だとしてもあまりに予想外すぎる事態にしばらく立ち尽くしていたが、意を決して中に入っていった。 サーヴァントを二騎従えているという事実が慎二を強気にしていたのだ。 何故か開かれていた校門から中に入ると荒らされたグラウンドと窓ガラスが割れ、外壁のあちこちが削られた校舎が見えた。 既に新たな聖杯戦争が始まっていることを改めて実感する光景だった。 そして驚くべきことに校舎に入ると数人の生徒らしき者がいた。 「おい、そこの奴!ここは本当は穂群原学園なんだ。 どこの魔術師だか知らないけどこの冬木でちょっと勝手が過ぎるんじゃないか?」 慎二が八つ当たりの対象に選んだのは休憩時間を利用して購買にお菓子を買いに行っていた図書室受付の間目智識だった。 彼女はどこか困ったような調子で慎二にとって信じ難い事実を口にした。 「君、確か間桐慎二君だよね? えーっと、すごく言いにくいんだけどここって地上の冬木市じゃなくてムーンセルで再現したバーチャルな冬木市なんだよね」 「は?なんだよそれ。 いい加減なこと言って誤魔化そうとしてるんじゃないだろうな?」 「いや、嘘なんかついてないから! だって君、地上の聖杯戦争で一度殺されたのにちゃんとこうしていられてるでしょ?」 「っ!?な、何だよお前、何でそんなこと知ってるんだよ!? ~~~!!くそっ、わかったよ、いいからまずは説明してみろよ! 嘘をついてたら、ライダーとキャスターにこの学校ごとぶっ壊させるからな!!」 聖杯戦争の当事者でもない限り知り得ない事実を知っている事に加え、自分がここで生きている理由を知っていそうなこの少女をすぐに殺すのは不味い。 そう考えた慎二は持てる理性を総動員して癇癪を抑え、話しを聞くことにした。 実のところ彼も死んだ筈の自分が生きている理由が気になってはいた。 死人を完全に生き返らせるなどそれこそ魔法の領域だ。 それにこの場所に来るまでにも(意図的に無視していたが)小さな違和感はいくつもあった。 如何にサーヴァントを従えていたとはいえ無断で魔術師の工房に侵入した非力な小娘相手に何もせず、姿も見せなかった祖父・間桐臓硯。 同じく所在の知れない義妹・間桐桜。 さらに蟲の一匹もいない異様な蟲倉。 それらの事実が慎二に辛うじて冷静さを保たせたのだ。 「……とまあ、大体こんなところかな?」 間目智識は語った。 ムーンセルの成り立ちやその機能、参加者に話しても問題ない範囲でのこの聖杯戦争の詳細なルールや性質などを。 「じ、じゃあ何か? 今ここにいる僕はただの再現されたデータだっていうのか?」 世間で言うところの遊び人である慎二は他の魔術師と違い、ある程度は機械やPCへの知識と理解があった。 だからこそムーンセルに関する説明も理解はできたのだが、それは別の困惑を生んだ。 人間一人のデータを丸ごと再現するなど尋常な事ではない。それこそ聖杯でもなければ到底成し得ないことだ。 いや、それを言えば街ひとつをそのまま再現するのもそれ以上の超越的な技術なのだが今の慎二にそこまで気を回す余裕はなかった。 「事実だけを言えばそうなっちゃうね。 でもそれは他のどのマスターも同じだよ。 現実世界に肉体があるか無いかっていう違いはあるけどね」 「……!!おい、ライダー!! そんな大事な事を何で僕に黙ってた!?」 怒鳴りつけた慎二の横に憮然とした表情のライダーが実体化した。 「貴様とて聞こうとはしなかっただろう。 経験者の貴様の意を汲んだまでよ」 その言葉には明らかに先ほど令呪を使われた事に対する意趣返しの念が含まれていた。 だが慎二はそんなことなど棚に上げて苛立ちを募らせていく。 「この大馬鹿野郎!! マスターにこんな基本的な事も伝えないサーヴァントがあるか!! お前本当に勝つ気があるのかよ!?ええっ!? 大したサーヴァント様だよ、まったく!!」 令呪の強制力が働いているのを良いことにこれまでこのサーヴァントにコケにされてきた鬱憤を罵声に変えて晴らしていく。 前回の聖杯戦争で自身の(正確には桜の)サーヴァントの忠告を全く聞き入れなかった彼がこんなことを言う資格はないのだが、今この場に限っては正論であるともいえた。 慎二の口が更なる罵声を紡ぎ出そうとしたその瞬間、それはやってきた。 まるで昼夜が逆転したかのような強烈な閃光と何かがぶつかり合ったような轟音、そして学園内の全ての窓ガラスを割るほどの凄まじい地震と衝撃波が襲いかかってきたのだ。 ライダーが渋々身体を張って盾になったため傷こそ無かったが衝撃によって慎二は無様にも床に寝転がる羽目になった。 「な、何だ今のは…。 そ、そうだ、あれはまるであの時の……」 そんな慎二の脳裏に浮かんだのはまだ真新しい記憶。 自らのサーヴァント・メドゥーサが敵サーヴァントの放った宝具の光の奔流の中に消えていった敗戦の瞬間だった。 それを漸く思い出した慎二の身体から急速に血の気が引いていった。 そう、いくら今回の自分のサーヴァント・ライダーのスペックが優れていようとあれほどの宝具を使われては耐えられるはずがない。 キャスターを屈服させた程度で自分は一体何を調子に乗っていたのだろうか。 (か、勝てるのか…?生き延びられるのか、僕は……?) ここに来て初めて強い不安に駆られた慎二に更なる追い討ちが待っていた。 「あ、新しい脱落者の名前が出たみたい」 同じく咄嗟にライダーの後ろに隠れて難を逃れた間目智識の言葉で掲示板(今まで気がつかなかった)の方を向いた慎二の視界に信じ難い名前が映った。 脱落者 天野雪輝 我妻由乃 イリヤスフィール・フォン・アインツベルン 正直に言って上の二人の有象無象のマスターはどうでもいい。 慎二の目を引いたのは三番目の名前、始まりの御三家の一角にして自分を一度殺したあの強力無比なバーサーカーのマスター、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンだった。 「そ、そんな馬鹿な…。 始まってからまだ半日だって経っちゃいないんだぞ。 なのにアインツベルンが、あのバーサーカーのマスターがこんなにあっさり…?」 その事実は慎二の中の死への恐怖を再燃させるには充分すぎた。 あのマスターを殺したのが今さっき炸裂した宝具であったならばまだ良い。 だがもしもそれ以外のまだ見ぬサーヴァントの手によるものだったとしたらどうする。 イリヤスフィールの名前しか追加されなかったということはそいつを倒したマスターとサーヴァントは未だ健在ということだ。 そんな危険な連中を向こうに回してどうして生き残れるというのか。 「や、やっぱり僕は死ぬんだ…。 もう駄目だ、おしまいだぁ……」 その場に蹲って嫌だ、死にたくないとうわ言のように呟きはじめた。 「うろたえるな、小僧!!!!」 そんな慎二にライダーの容赦ない叱責が飛んだ。 不甲斐なさすぎるマスターに苛立ちが頂点に達したライダーの大音声は、結果としては慎二にいくばくかの冷静さを取り戻させた。 「貴様は誰を従えていると思っている!! この拳王を召喚しておきながらそのような無様を晒すなど…恥を知れい!!!」 「な、何だよ…。 何偉そうなこと言ってんだよ。 お前状況わかってんのかよ!? あんな危険な宝具を持ってる連中と戦って勝ち抜けると思ってるのかよ!? お前だってたった今見たとこだろ!」 「愚問だ。 甚だ不本意だがこの拳王の名にかけて貴様を聖杯の頂きまで連れていってやろう」 有無を言わさぬ断固とした口調で告げるライダーに慎二は不覚にも多少の頼もしさを覚えた。 彼の前のサーヴァントは従順ではあったが勝利を約束することはしなかった。 否、勝利そのものに対して執着が無いようにも見えた。 だからこそ、憚ることもなく勝利を断言するこのサーヴァントが眩しく映った。 「ライダー、お前……」 ライダーに何かを言おうとしたところでまたしても騒音が響いてきた。 先ほどよりも遠くから聞こえた音に慎二は今度こそ冷静な判断を下すことができた。 「よし、まずは様子を見るぞ、もちろん一番安全な場所からな」 そして時間は現在へ戻る。 突如として敵マスターとサーヴァントの奇襲を受けたスザクは必死で事態を好転させるべく頭を回転させていた。 今の自分達は激戦を越えたばかりであり、はっきり言ってまともに戦える状態ではない。 となれば取り得る手段は一つしか有り得ない。 「待ってくれ!」 「何だよ?命乞いか?」 妙に自信満々な相手の様子を怪訝に思いながらもスザクは言葉を紡いでいく。 ここで戦うわけにはいかないのだ。 「そうじゃない、君は知らないかもしれないがこの聖杯戦争は単独で戦い抜けるほど甘いものじゃない。 現に今柳洞寺には三組のマスターが籠城しているし、僕自身も二人のマスターと同盟を結んでいる。 ここで僕らが潰し合うのはどう考えても得策じゃない。 むしろ、ここは一時でも手を組んで柳洞寺を攻めて後顧の憂いを絶つべきだ」 提供しても構わない情報を小出しにしつつ交渉を試みる。 柳洞寺にいるマスター達の存在を考えれば衛宮切嗣や鳴上悠もここでスザクが脱落することを望まないはずだ。 この交渉が上手くいかなくても彼らが救援に来るまでの時間を稼げば良い。 あの二人、特に衛宮切嗣に対しては弱みを見せたくはないが背に腹は代えられない。 「へえ、それは確かに人手が要りそうだ。 手を組む必要もあるかもね。 その上で聞くけど、僕とお前が対等な関係である必要がどこにあるわけ?」 だが、相手のマスターはまるで耳を貸す様子がない。 こちらの言うことを信じていないわけではないようだが、だとすればこの不可解なまでの自信は何なのだろうか。 考えを巡らせる暇も与えぬとばかりに海藻頭の少年はサーヴァントに顎で合図し、それと同時に敵サーヴァント――恐らくライダー――が凄まじい威圧感を放ちながら突進してきた。 バーサーカーはすかさず黒龍ドラグブラッカーと共にライダーを叩き潰すべく迎撃を試みる。 ランサーや元の持ち主であるライダーをも叩き伏せた黒龍の性能は断じて伊達ではない。 だが、その選択は拳王ラオウに対してはこの上ない愚策と呼ぶ他なかった。 「そのような木偶でこの拳王と対等に戦おうなど…笑止!!」 そう言うやライダーは右掌に魔力、いや、気を溜めていく。 そして、迫るドラグブラッカーに真正面から激烈な気を放った。 「北斗剛掌波!!!」 周囲を揺るがす爆音とともにドラグブラッカーの巨体が大きく揺れた。 騎手であるバーサーカーが必死に制御しようとするも、多大なダメージを受けた黒龍は人間でいうところの棒立ちに近い状態に陥った。 「砕けよ!!」 その隙を見逃さずライダーの剛拳がドラグブラッカーを直撃し、その身体を粉砕した。 拳王ラオウの全身全霊の拳はその一撃一撃が平均的な対人宝具にも匹敵する。 魔力の塵となって消えていく黒龍を他所にバーサーカーはすぐ後ろに着地して難を逃れたが戦力の大幅な低下は免れなかった。 (不味い!!) 今の一連の攻防からスザクは目の前のライダーとバーサーカーが極めて相性が悪いことを痛感した。 あのライダーは武具という武具を用いない、武術でもって戦うサーヴァントだ。 バーサーカーが奪える武器が無いのでは真正面からの戦いを強いられることになる。 しかもこのライダーは相当な実力者だ。 もしもバーサーカーが切り札“無毀なる湖光(アロンダイト)”を使える程度まで回復していたのなら足の傷を考慮しても互角以上の戦いができただろう。 だが現実にはバーサーカーは先ほどの一戦で貯蔵魔力の大半を消耗していた。 無理を押して両腕を修復して衛宮切嗣と鳴上悠らの戦闘に介入したことがここに来て裏目に出た。 さらに、ランサーの“刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)”を防御した時に受けたダメージも未だ癒えていない。 如何に身体の限界を超えて戦えるバーサーカーといえども体力も気力も魔力も尽きた状態でまともな戦いなど出来るわけがない。 スザクのその考えを裏付けるようにバーサーカーはライダー相手に防戦を余儀なくされていた。 その場に転がっていた角材を即席の宝具にして凌いでいるが、ライダーの拳を受ける度に宝具としての神秘を付与された筈のそれが軋みをあげ、バーサーカー自身にも確実にダメージが蓄積していった。 このままでは決壊は時間の問題だ。 (ならば打つ手はひとつだ……!) 「ハハ、ハハハハハハハハ!! 凄い、凄いじゃないかライダー!! 流石は僕のサーヴァントだ!!」 そう、熱に浮かされたように騒いでいるあの少年をスザク自身が仕留めることだ。 見たところ、戦闘の心得があるようには見えない。 (その油断が命取りだよ) 幾度目かもわからないライダーとバーサーカーの激突。 その間隙を縫ってスザクは駆けた。 普通の人間の限界を完全に超越した動きで少年、間桐慎二に迫る。 「ハッ、引っかかったなバーカ!」 猛烈なスピードで突進してくるスザクを嘲笑する少年の背後から何者かが現れスザクを殴りつけ、瞬く間に組み伏せた。 「ぐっ…!ま、まさかそんな……!?」 スザクが驚くのも無理はない。 突然現れたその男は明らかに人間とは異なる気配、即ちサーヴァントとしての気配を纏っていたからだ。 スザクは知らないことだが、そのサーヴァントこそキャスターとして招かれたゾルフ・J・キンブリーだった。 「ハハッ!無様だね。ああ、言っておくけどアテにしてる同盟相手の援軍なら来ないぜ?」 「なっ!?ど、どうして…」 動揺を露わにしたスザクの顔を見た少年は何かの確信を得たかのようにニヤリと笑った。 即座にしまったと気付いたがもう遅い、少年はカマをかけていたのだ。 (迂闊だった…!さっきの戦いは見られていたんだ!) 「大体さあ、ちょっと考えればわかるだろ? これは聖杯戦争だぜ?いくら同盟してるからって競争相手には違いないんだ。 そんな奴のピンチに駆けつけるような物好きがそうそういるわけないだろ。 ましてあんなやり方で介入したんじゃ尚更さ」 得意気に自らの推理を語る少年に返す言葉をスザクは持たなかった。 衛宮切嗣と鳴上悠の思惑は分からないが今もって彼らがスザクを助けに来ていないことはどうしようもない事実だからだ。 「ともあれ勝負ありって奴だ。 おいキャスター、死なない程度に痛めつけてやれ。 そいつとサーヴァントには使い道があるからね」 「…ええ、わかっていますとも」 「……!!」 キャスターはまずスザクの残された右腕をへし折った。 そして両足に手を添えた次の瞬間、スザクの両膝に小型の爆弾が出現した。 「なっ…!?」 その直後スザクの両足は爆ぜ、膝から先の部分が永遠に失われることとなった。 その激痛たるや、スザクの人生においても経験したことのない例えようのないものだった。 「ぁ、ぐああああああああああああああああああぁぁぁっ!!!!」 「あははははは!!こりゃ傑作だ!! さあて、お前に選択肢をやるよ。 ここでキャスターに体中を爆破されて死ぬかサーヴァントを差し出して生き延びるかという素敵な選択肢をね」 「だ、誰、が……!!」 下衆な笑いを浮かべながら見下してくる少年を渾身の力を込めて睨み返す。 例えここで死ぬとしても戦友と認め合った者を売り渡すわけにはいかない。 そう固く心に誓い、歯を食いしばる。 だが、世界がスザクの意思を聞き届ける理由はどこにもない。 いや、それは裏切りに塗れた人生を歩んできた彼への罰だったのかもしれない。 枢木スザクには既に誇りある死を選ぶ事すら許されない。 ――――生きろ (……!?) 突如頭の中に響いた命令(ギアス)。 慎二の提案を拒めば即座に死を免れないこの状況においてその呪いはスザクに最も恥ずべき言葉を選ばせた。 「ああ、わかった」 「へえ、物わかりが良いじゃないか。 ってお前、もう令呪を一画使ってるのかよ。 まあ良いさ、お前はサーヴァントにこう言うんだ」 スザクの赤く染まった瞳に気付かぬまま気を良くした慎二は令呪の使用を促した。 その指示に従って、スザクの口は禁断の言葉を紡ぎ出した。 「間桐慎二及びラオウに命令された事柄を除く一切の行動を永久に禁じる」 その瞬間、戦闘中のバーサーカーの動きがピタリと止まった。 対魔力の低い彼に令呪の強制力に抗う術などありはしないのだ。 見覚えのある光景にライダーは恨みがましい表情で慎二を睨んだ。 「…貴様、またか」 「怒るなよ、これは立派な戦略ってやつさ。 むしろ感謝したって良いんじゃないか? これから先お前が直接戦うに値しない雑魚はみんなキャスターとバーサーカーが片付けてくれるんだからさ」 「…ふん」 「……俺…は…何を……」 慎二とライダーが話し込む中、スザクの心は途方もない絶望に支配されていた。 せっかくバーサーカーと分かり合えた筈だった。 ここから自分たちの聖杯戦争が始まる筈だった。 それなのに聖杯への道をたった今、自ら断ち切ってしまった。 これから先聖杯戦争を勝ち抜くなどもう不可能だ。 これが父を刺し、旧友を皇帝に売り渡した自分への報いだとでもいうのか。 こみ上げる悔し涙を抑えることができなかった。 (何故だ…ルルーシュ、俺はどこで間違えてしまったんだ? もし君ならこんな逆境も覆せたのか……?) 神の視点から言えばこの聖杯戦争でのスザクは常に最善かそれに近い行動を取り続けてきたと言っていい。 当初バーサーカーを単独で行動させた事も並のマスターやサーヴァントが相手であればベストといって差し支えない策だったし、運悪く匂宮出夢に発見されてしまったが聖杯戦争において弱点となるマスターが潜伏するのはむしろ良い判断だった。 それらの策は結果的に裏目に出たが、それでもそのすぐ後に令呪を用いてバーサーカーとの対話を図り、鳴上悠から宝具を奪還したことも些か拙速ではあったが彼らの窮状を鑑みれば限りなくベストに近い判断だった。 無い無い尽くしの中スザクは見事な奮戦を続けていたが、運を味方につけることだけはできなかった。 もしも彼に失策と呼べるものがあったとすれば、先ほどの戦いの後単独で行動してしまったことと、失地を挽回しようと焦るあまり自分達の行動が第三者に見られる可能性がある事を失念していたことにある。 スザクが気付いた通り慎二らは先ほどの戦いを学園の屋上から遠目に観察していた。 以前にサーヴァントを使役した経験のある慎二は英霊が視力においても人間のそれを遥かに超越することを知っていた。 故に屋上という比較的安全な場所からでもある程度は戦闘の様子を窺い知る事ができると判断したのだ。 その判断は功を奏し夜間とはいえ街中で堂々と戦闘に勤しんでいた二人のマスターとスザクらの姿をライダーとキャスターの眼はしっかりと捉えていた。 流石にどのような会話がされていたかを聞き取ることは叶わなかったが突如として戦場に介入し、特撮ヒーローのような姿のサーヴァントの宝具の一部を奪いランサーのマスターを攫い、もう一方のマスターに電話をかけたスザクやバーサーカーの動向から慎二はある結論を導き出した。 即ち、スザクは自らが主導権を持った同盟を築くために戦場に現れ、ランサーのマスターに令呪を使わせランサーの戦力を出汁にして恫喝することでもう一人のマスターとも共闘を持ちかけたのだと。 このように考えればランサーのマスターを殺さなかったスザクらの動きの理由にも説明がつく。 令呪の使用を示す強烈な赤い光が出たことをライダーらがしっかりと見ていたことも慎二に自らの推理を肯定させる材料になった。 そして三組の中からスザクを選んで奇襲を仕掛けたのもいくつかの理由あってのことだ。 一つは単純な位置関係。 スザクらは運悪く慎二らに最も近い位置に移動してしまっていたのだ。 もう一つはスザクら三組の同盟の関係性だ。 慎二は戦闘に介入して引っかき回した挙句片方のサーヴァントの宝具を奪い、片方のマスターに令呪を使わせたスザクは介入された双方から恨みを買っていると推理した。 逆に残る二組のマスターのどちらかを攻撃すれば折角の共闘関係を壊させまいとスザクが横槍を入れる可能性が高いとも考えた結果、スザクを潰すのが最もリスクが低いという結論に達した。 逃げの一手を打たれないようあらかじめキャスターを後ろに伏せさせた上で敵サーヴァントの索敵範囲外からライダーの宝具“黒王争覇”で強襲を仕掛けたのだった。 それでも同盟相手が救援に来るのではないかという可能性を完全には捨てきれなかったため、慎二は大きな態度とは裏腹に内心では気が気でなかったのだが、結果的にはその心配は杞憂に終わった。 残る二組は元々一戦交えていた連中だ。主導権を握っていたスザクが潰えれば再び勝手に潰し合ってくれるのは明白だと慎二は考えている。 元々間桐慎二は所謂要領が良いとされるタイプの人間だ。 それを支えているのが(本人はさして自覚もしていなければ誇ってもいないが)人より優れた推理能力だった。 第五次聖杯戦争では魔術回路を有さない事から来るコンプレックスや家のしがらみ、過剰なまでの衛宮士郎や遠坂凛への敵愾心から最後まで発揮されることは無かったそれがこの場においてついに存分に振るわれた。 この聖杯戦争でもやはり魔力供給は不得手だが、サーヴァントを指揮するマスターとしては決して悪くない素養を持っているのだ。 対キャスター戦に続いて完全な勝利を収め、バーサーカーをも手駒にした慎二には精神的な余裕が生まれつつあった。 キャスターを使ってスザクを引き続き脅すことで彼はスザクがこれまで入手してきた情報をそっくり手に入れることにも成功した。 それを基にして慎二なりの今後の戦略を構築していく。 (夜も明けたしとりあえずは家に帰ってしばらくは静観だな。 バーサーカーが回復しないようなら魂喰いでもさせれば良い。 やりすぎたらペナルティがあるらしいけどそれで損をするのは僕じゃなくて枢木の方なんだ、ゲームみたいな杓子定規なルールはこういう時ありがたいね) それは先ほど間目智識からムーンセルについて聞き出した時に確かめた事だった。 多数のNPCを殺傷し続けた際、ペナルティを被るのは実行したマスターとサーヴァントに限定される。どのような状況にあるかは斟酌されないということだ。 (衛宮、少しは猶予をやるよ。 あっさり僕が勝ってしまったんじゃつまらないからね。 べ、別にあいつのサーヴァントの宝具が怖いわけじゃないぞ) ニヤつきながら間桐家へと引き返していく慎二の背中をキャスターは無表情で見つめていた。 (まだまだ警戒されているようですね。 これはもう少し積極的に取り入らなければ隙を作らないかもしれません) 先ほど屋上でスザクらの戦闘を観察させた際、慎二はやろうと思えばより詳細な情報を知ることもできた。 彼が屈服させたサーヴァントは魔術師の英霊であるキャスター。 その類い稀な道具作成技能を活用すればサーヴァントの眼に頼らずとも慎二が直接戦況を覗くこともできた。 そうしなかったのは令呪で従わせているにも関わらず未だ完全には自分への警戒を解いていないからだ、とキャスターは考えている。 いや、先ほどの戦いでキャスターに背中を晒すような指示はしていたことから基本的には屈服させたものと思っているが無意識レベルでは信用していない、といったところだろう。 未だサーヴァントとしての意識が薄いキャスターは知らないことだが慎二が元いた世界の聖杯戦争においてキャスターのサーヴァントは奸智に長けた裏切りのクラスとして知られている。 如何に令呪の力で従属させているとはいっても結局のところキャスターも慎二にとっては敵サーヴァントの一人でしかない。 そんな輩に自身の命を預ける道具を用意させるなど自己の保身を何よりも優先する今の慎二には考えられないことだった。 当然にして彼は未だキャスターに間桐家を工房として使う許可を与えていない。 安心できないという何ら戦略的見地に基づかない理由で高い後方支援能力を持つキャスターを通常戦力としてしか用いないのは下策と評する他ないが、その下策が結果的にキャスターにとって動きにくい状況を作っているのもまた事実ではあった。 キャスターはこのままずっとあの小物としか言い表せない少年の道具でいる気は全く無い。 いや、そもそも極めて意思の薄弱な羽瀬川小鳩のサーヴァントでい続ける気も更々無かった。 彼はこの戦いを勝ち上がるためにより有力なマスターを常に探し求めている。 だがその計画を実行に移すためには現在自分の生殺与奪を握っている慎二を上手く油断させ、厳しい条件の中謀殺せねばならない。 バーサーカーをも従えた慎二はいよいよもってキャスターを使い潰すことに躊躇いなど覚えなくなるだろう。 何しろバーサーカーのサーヴァントには裏切りを考える思考能力など無いのだから。 (ただ…今のところ運があの少年に味方しているのも事実。 その運が持続している限りは従っておくのも一つの手ではある…) キャスターが分析する限り間桐慎二はこの聖杯戦争に参加したマスターの中でも最も幸運に恵まれているマスターだ。 彼自身は貧弱なマスターながら開始早々に輪をかけて貧弱なマスターである小鳩を補足し、キャスターを手駒にしたという幸運を発揮した。 また、小鳩の拷問に時間を費やし、学園に寄り道したことで運良く先に学園で行われたのであろう戦闘や直後に起こった大規模な宝具合戦に巻き込まれなかった。 更に幸運なことにスザクらの戦いも比較的安全な場所から傍観し、最もリスクの低い戦略を立て、結果としてバーサーカーをも屈服させることにも成功した。 運もまた実力の内。キャスターは生前の経験則から運を味方につけている者を無理に排除しようとする者は往々にして手痛いしっぺ返しを受ける事を知っている。 如何にしてあの小心者なマスターに取り入り、どのようなタイミングで反旗を翻すか。 キャスターはそれらの方策を未だ計りかねていた。 【深山町・民家跡/早朝】 【間桐慎二@Fate/stay night】 【状態:疲労(小)、気分高揚、残令呪使用回数2画】 【ライダー(ラオウ)@北斗の拳】 【状態:魔力消費(中)、令呪】 ※令呪の詳細は以下の通りです 間桐慎二に異を唱えるな 【枢木スザク@コードギアス 反逆のルルーシュ】 【状態:疲労(大)、右腕骨折、左腕欠損(処置済)、両足喪失、絶望、残令呪使用回数1画】 【バーサーカー(ランスロット)@Fate Zero】 【状態:ダメージ(特大)、魔力消費(特大)、右大腿に刺し傷(通常の回復手段では治癒不可能)、令呪】 ※令呪の詳細は以下の通りです 間桐慎二及びラオウに命令された事柄を除く一切の行動を永久に禁じる ※リュウキドラグレッダーは完全に破壊されました 【キャスター(ゾルフ・J・キンブリー)@鋼の錬金術師】 【状態:健康、令呪】 ※令呪の詳細は以下の通りです 間桐慎二及びラオウに従え 間桐慎二の命令があり次第速やかに自害せよ
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キャラシート【としあきの聖杯戦争TRPG】 泥 名前 ブリジット・メイア・ウィンザー・ライジェル 英名表記 Bridget Meir Windsor Rigel 誕生日・年齢 11月11日・16歳 身長・体重 159cm・45kg 血液型 A型 好きなもの 王道、紅茶 苦手なもの 卑劣な手段や策謀、カレー 特技 降霊術 起源 王道 属性 秩序・善 魔術属性 水・風・土 魔術系統 降霊術、召喚術、元素変換魔術など 魔術特性 支配 魔術回路 質:A / 量:C/ 編成:正常 略歴 現英国王室・ウィンザー家の傍流にあたる家系・ライジェルの若き当主。 父であるグレゴリー・ライジェルは多方面に優れ有力な当主であったが、朋友であった同盟家の裏切りを受け派閥争いに敗北。 その過程で呪殺された父の跡を継ぎ、弱冠14歳で当主の座に就く。 グレゴリーの優れた手腕を完璧以上に受け継いだブリジットは侮られる中でその才能を如何なく発揮。 僅か2年で傾いていた勢力図を塗り替え、元同盟家や敵対勢力を退け、再び元の地位へと返り咲いた。 その際に王家から「ウィンザー」姓を名乗る事を許され、彼女の代からその名前を採択している。 英国政府より「率爾発生特異点夢覚処方機関」――通称デスペルタドールによる、夢界事象への対応を要請され、第三夢界調査に際して同組織に合流する。 聖杯戦争儀式についての知識は有しており、セイバーを召喚し事態の解決にあたる。 人物 白いドレスの様な装束に身を包んだ、容姿の上ではまだ幼さの残る少女。 プラチナブロンドの髪をショートカットに切り揃え、透き通る乳白色の肌をあまり露出しないよう金縁刺繍のローブを纏っている。 家督継承後の手腕を「必要とはいえ汚い手段にも頼った故の恥」と認識し、君臨する者の責務として潔白且つ気高くあることを誇るなど、 その精神性は正しく高貴なる者(ノブリス)を体現している。 事実ブリジットは「王」としての素質を持って生まれ、知識や経験を積むにつれ上に立つ者として成長している。 とはいえ、ブリジット自身は王や統治者になりたいわけではなく、その精神性と環境がどうしようもなく王道であるだけ。 本人は寧ろ魔術師として大成したいのだが、能力はともかくその清廉さが災いして今以上に進まない事に悩んでいる。 但し自身の立場とそれに伴う責務は正しく自覚しているため、持ち得る権利と義務を正当に振るう事を心掛けている。 同時に「人の上に人あらば、それは機構として機能してはならない」という自論を持っており、「国の為の王」という在り方を嫌う。 王が王たるには民の為に在り、民無くして成立する国は無い。然し王もまた、その国に根付く民である。 故に彼女は一方的に非ず、その恩恵の流動をこそ大事にした義務の在り方を提唱している。 +人間関係 人間関係 セイバー デスペルダドールの特殊事象対策として召喚したサーヴァント。雷鳴の皇帝の腹心、当代最強の軍人皇帝。 能力 様々な系統の魔術を修めているが、特に降霊術に秀でている。 ライジェルの降霊術は通常の基盤に加え元素変換の延長線上にもあり、パラケルススの提示した四大精霊(エレメンタル)に関係している。 ブリジットはその中でも水の精霊ウンディーネと相性がよく、精霊の欠けた魂を補う事で自身に憑依させ、その力を借り受けることが可能。 これにより真エーテルを解き明かすことがライジェルの命題の一つでもあり、根源へのアプローチの一手段となっている。 魔術戦闘においては空気中の水分子に作用し、収束した水泡を急激に熱し水蒸気爆発を引き起こす『泡沫のクワイア』を主軸にする。 起源覚醒者ではないものの、その絶大な在り方は存在としての性質に大きく引っ張られている一例と言える。 事実ブリジット自身も自らの在り方を止める事ができないのか、魔術の研鑽という目的との両立に苦心している。 逆にその過程で手に入れた知識は豊富であり、各地の伝承や土着信仰に由来する魔術など比較的マイナーなモノについても知っている。 +主な魔術 主な魔術 『泡沫のクワイア』 「魔術師の本分は戦闘ではない。ですが、そうなる事を想定出来なければただの愚者です」 彼女の魔術戦における戦闘スタイル、及びライジェルの降霊術を用いた術式の名称。 空気中の水分子をウンディーネの力で操作し、急激な熱負荷を掛けることで水蒸気爆発を引き起こす。 魔術により引き起こされるが、水蒸気爆発そのものは物理現象であるため抗魔術などは意味を為さない。 純粋な火力もかなり高らしく、後先を顧みない最大出力であればカトラ山の噴火に匹敵するとも。 『剣たる騎士の叙勲(ナイト・オブ・オーダー)』 「――汝の身は我の元へ、我が命運は汝の剣へ。その使命、ヒトの世の現身として真理を守る防人となれ!」 聖杯戦争において、ブリジットが英霊召喚後に行う儀式魔術。 英国王家の宝器『慈悲の剣(カーテナ)』を投影し、騎士叙勲を模した儀式を行うことでサーヴァントとの相性を概念的に補強する。 サーヴァント側は一部能力値や魔力効率の上昇、ブリジットは令呪の強制力増加や指示の円滑化などの恩恵を得られる。 ブリジットとサーヴァント双方の承認が必要だが、無理強いをする気はないため最終的にはサーヴァント次第。 また、この『慈悲の剣』はあくまで形と最低限の性質のみを持たせた投影品であり、儀式礼装として以外の使用には向かない。